ムナーリ展

1月14日(月)、厳しい寒さとなった成人の日、午後から板橋区立美術館の「ブルーノ・ムナーリ あの手この手」展を観に行く。昨年から行こうと思っていた展覧会で、知人からも「よかった。お勧めです」との情報も頂いたので期待していたが、実際に訪れてみたら期待以上だった。
生誕100年記念展とあって、展示点数も300点以上に及ぶ大規模な展示だった。中でもムナーリと日本との関係に焦点を当てた、第10セクションが充実していたように思う。ムナーリを日本に紹介した瀧口修造をはじめ、柳宗理福田繁雄武満徹、イタリアで活躍した建築家岩淵活輝らとの交流の軌跡が、さまざまな資料で跡付けられていたし、瀧口旧蔵の資料や書籍、往復書簡なども展示されていた。
入口脇のモニターで上映されていた映画では、80歳を超えたムナーリが自宅にカメラを迎え入れ、自らのオブジェを片端から説明していた。たぶん1958年に瀧口がムナーリを訪ねたときも、こんな風だったのだろう。オブジェにつけられた名前はユーモアに溢れ、いかにもムナーリらしい。
また会場内のモニターの短編映画4編のうち1編は、画面上の色彩を偏光板の回転によって万華鏡のように刻々と変化させていくもの。純粋で透明な色彩の変化はそれ自体でたいそう美しく、まるでカンディンスキーモンドリアン、クレーなどの絵画を動画にしたような感じだ。以前から東京国立近代美術館で(瀧口の企画により)1960年に上映された「ダイレクト・プロジェクション」を一度見たいと思っていたが、この映画と同じ趣向だったのかもしれない。この「ダイレクト・プロジェクション」には武満徹作曲による音楽「クワイエット・デザイン」が付けられていたそうだが(瀧口旧蔵の録音テープ一巻も展示されていた)、会場の映画ではプリペアド・ピアノのような効果音の連続だった。これも音楽の一種なのだろう。
受付の脇で図録を購入した後、階下の売店でムナーリの本やダネーゼ社製のオブジェ(ムナーリのデザイン)なども見た。定価の2倍くらいの感じで、かなり高かった。これでは何も買えない。つい7〜8年前には1ユーロ90円くらいだったのに、いまや160円だから、本の値段が2倍になっても不自然ではないのだが、経済政策の明らかな失敗のツケを国民が払わされていると思うと、腹立たしかった。(確か2〜3年前の、ユーロが120〜130円くらいだった頃、「150〜160円になってもおかしくない」と予言したことがあったのだが、不幸にして当たってしまったようだ。)
今回担当された学芸員Mさんにご挨拶して、瀧口修造のことなどを立ち話。最終日とあって、忙しそうにしておられたので、話も早々に切り上げて会場を後にした。久しぶりに後ろ髪を引かれる思いがした。この後、刈谷・滋賀に巡回するそうなので、追いかけるかもしれない。