結果は抽籤で(その2)

5月23日(金)。夕方から神保町へ。古書会館地下の市で3冊買った後、すずらん通りに移転した古書店Bの1階を覗く。続いて新刊書店T堂に入る。1階の新刊書をざっと見た後、3階に上がって「地方小出版コーナー」を確認、早速、買わなくてはいけない本を1冊見つけた。さらに某T書店に向かう。表の特価本ワゴンで、持っていない図録を3冊いただく。

店内に入ると、店主が「今日は点数が多いから、<○○の嘆き>でやることにした。先に行っていてくれ」という。先に来ていた常連A君、C君の2名とそちらに向かう(前回の抽籤のときになかなかの強運ぶりを発揮したB君も、後から駆けつけるそうだ)。稀覯本でいっぱいのダンボール1箱を台車に積んで、店の重鎮K君が先導してくれた。

とりあえずビールで喉を潤しながら、お互いのエントリーや、関心分野などについて情報交換。A君は、近代詩関係を40年近く追っている先達だが(しかもあちらの方が年長だから「君」ではなく「さん」だ)、アルコールの勢いか、今回初めてその蒐集リストの一部を見せて下さった。これには驚いた。幻の出版社B書店(モダニズム関係の稀覯本で有名)の刊行物が、あと2〜3点で完全に揃う状態なのだ(版の違いなども含め)。聞けば、コレクションのこの辺りの部分は、ある別の古書店主が著したこの出版社に関する書物より、かなり前に出来あがっており、あの著作にも相当協力したのだそうだ。もちろん協力者リストにも挙げられていたが、こうした具体的な事情までは当事者でないと判らないものだ。
C君は、近代文学全般の初版本を幅広く蒐集している方だが、その読書の範囲はたいへん幅が広く、文学に留まらず、哲学にも及んでいる。この日も店頭でパスカル研究の第一人者前田陽一の記念論文集を購入していた。証券関係のお仕事だと伺ったが、頭の下がることだ。

やがて長老Tさんと店主も合流し、しばらく歓談した後、いよいよ抽籤が始まった。まだ到着しないB君が申し込んでいるものは後に回して、他の当選者を次々に決めていく。
Aさん、C君は、相互に重なるものが4点ほどあったが、五分と五分の結果。実はこの二人、自分の優先順位と逆のものを引き当てたりしたのだが、お互いの間で交換するという高度な調整も経て(事前の歓談の賜物だ)、二人とも「これならまあ満足だ」と言う結果に落ち着いた。今回は長老Tさんも1冊エントリーされたが、少し分野が違っていたので、競合者が現れなかった。

私が申し込んだ1冊は、1万円未満ということもあり、申込者が多かった。実はAさん、C君もそうだったのだが、私がこの1冊に絞っていることが判ると、辞退してくれた。ありがたいことだ。これで確率がかなり上がり、お蔭様で引き当てることができた。
遠方の友人I氏が申し込んだ珍しい写真集も、エントリーが集中していた。「Iさんに代わって君が引いてくれ」と言われ、緊張したが、今回はこれも見事に引き当てた。胸を撫で下ろした。(外していたら永年の友情にヒビが入るところだった。)自らも申し込んでいたAさんが祝福して下さり、「これは知り合いが持っているのより状態がいいです。彼は中性洗剤で表紙を拭いたら、黒インクが落ちてしまったから、拭かない方がいいですよ」と、アドバイスまでして下さった。
B 君は仕事を抜けられないようで、いつまで待っても現れない。とうとう長老Tさんが代役を務めることになったが、強運は続いており、かなりの割合で当たった。
結果を見ると、B君が少し多い以外は、だいたいバランスが取れた形になった。A,B,C各君がみな外して、葉書で申し込んできたお客さんに回ったものも相当数ある。まだまだ抽籤は続くようだが、さて、いつまで参加できるだろうか・・・
(これからしばらく旅に出ます。戻ってきたら、またアップします)