茅場町・神保町

selavy2008-06-14

6月12日(木)。夜11時過ぎに知り合いの女性からメッセージが入る。親友(女性)がまだ30歳にもなっていないのに、亡くなったという。驚いてしまった。私自身は直接の面識がなかったが、この日記を「はてな」に移す前のmixiの頃から読んで下さっていた方なのだ。しばしばコメントを、時にはメッセージまでもいただくことがあり、実は先月の関西旅行の際もメッセージを交換したばかりだった。
知り合いにお悔やみの返信をした後、改めてその方ご自身の日記を読み返した。まるで10代のように繊細で、しかも芸術家肌の鋭い感覚で綴られている。当時は楽しく拝読していたものだが、その主はもうこの世に居ないのだと思うと、涙が溢れてきてしまった。
ご冥福をお祈りしたい。(いつか改めてこの方のことを書こうと思う。)


6月13日(金)。眠れぬ夜を過ごして体調が悪く、おまけに夏本番を思わせる暑さだったが、午後から出かける。東京駅から歩き、日本橋の「はいばら」で紙製品を物色。こういう店で紙や文房具を調えられるようになりたいものだ。

そのまま茅場町まで歩き、タグチ・ファインアートでドイツの女流画家イングリット・ヴェーバーの個展を見る。今回は《12tone - ars lucis et umbrae - experimentum》と題され、12枚のタブローが展示するもの(うち1枚を上掲)。6色の基本色とそれぞれの中間色の、計12色からなるカラー・チャートとしても構成されており、特に第二室に展示された黄〜紫の7色のグラデーションが美しい。椅子に腰掛けて眺めているだけで、眩暈を起こしそうだ。
http://www.taguchifineart.com/installations/IWinst4.html


続いて、同じビルの1フロア下の森岡書店に行き、細江英公写真展「ミス・ペテン」を見る。タグチ・ファインアートに向かって階段を上がっている途中で告知の貼紙が眼に入り、期待していた。

ドアを開けるなり、知り合いのIさんと眼が合った。「あっ!こんにちは」「あれっ!何だ、Iさんの仕掛けだったのですか。」と、お互い驚いてしまった。(この店では、昨年末にも知り合いと鉢合わせしている。まったくもって、よく人と出会う店だ)
Iさんは神保町の某T書店でもよく顔を合わせる常連で、某W大学で教鞭をとりながら、細江英公のスタジオに通っているのだ。早速、今回の展覧会について説明してくれた。(案内状では、下記のように述べられている)

「1966年、下着デザイナー鴨居羊子は下着の創造のかたわら作成した手製の人形を1冊の写真集〈ミス・ペテン〉にまとめましました。今日では幻の写真集と称されるこの書籍、撮影を担当したのは若き日の細江英公でした。本展では当時撮影された〈ミス・ペテン〉シリーズより33点のオリジナルプリント細江英公の書籍、資料を展示販売いたします。」

細江英公の写真においては、人物の場合でも「演出」が見られるのだが、人形を相手にすると、これがまったく自然で違和感が起こらない。しかも鴨居羊子が制作したその人形は、ベルメールのようなおどろおどろしさが無く、むしろ可愛い感じがする。その人形たちをいろいろなシチュエーションに置いて、ひとつの物語が綴られている。(単行本化されれば、写真による絵本ということになるだろう。)そこにはこの写真家のエッセンスが凝縮されているばかりか、自身の姿も投影されているようで、Iさんがおっしゃるとおり、初期を代表するシリーズとなるかもしれない。
http://www.moriokashoten.com/?pid=7855040


「はいばら」と二つのギャラリーで長居をしていたら、5時半を過ぎてしまった。慌てて地下鉄で九段下まで行き、神保町の某T書店に顔を出す。閉店間際に滑り込んだ形で、常連の長老Tさんがちょうど帰宅されるところだった。店主から刷り上ったばかりの七夕の大市のリーフレットを貰う。早速開いてみると、立原道造の自家蔵本、梶井基次郎の創作日記などなど、今年もすごいものが並んでいる。先立つものがあれば、いくらでも挑戦するのだが・・・。カタログ本体を見るのが楽しみでもあり(もちろん実物も)、また怖い気もする。
出品業者や元の出所などについてもう少し話を聞こうとすると、ちょうどそこに電話が架かってきてきた。用件が終わるのを待っていたが、店主が簡潔に捌こうとしているにもかかわらず、向こうは(一人暮らしでよほど話し相手がほしかったのか)一向に切り上げようとしないようだ。待ちくたびれて、ほとほと往生している店主に目礼し、店を出た。
N書店の知り合いに挨拶した後、新刊書店を2〜3店覗く。その後、夕食にしたが、節約して牛丼。渋谷経由、東横線で帰宅。渋谷駅では14日の新線開通の準備もすでに万端のようだった