白金台から品川へ

selavy2008-06-23

6月21日(土)。夏至だというのに、朝からあいにく雨模様となった。早めに昼食を済ませ、白金台で開催された某学会に出席する。発表はこの日の3番目。C.D.フリードリッヒ、G.ベッリーニと、西洋美術史の正統的なテーマが続いた後に、瀧口修造の書斎に関して話すとは、題目の並びを見ただけで場違いで変則的な印象だ。(異彩を放っているとは言えないだろう。)
当初の式次第では3時30分頃からだったはずだが、予定外の議事が入ったうえ、前の2つの発表への活発な質疑が続いて後ろ倒しとなり、順番がまわってきたのは、予定より1時間以上遅れた4時半頃だった。出席者もそろそろ帰宅時間が気になる頃なので、「短く簡潔に」を最優先とし、論点を端折ってまとめる(それでも25分かかってしまったが)。それなりに刺激的だったようで、3〜4人から質問があったばかりか、大御所の3先生からもそれぞれ質問・コメントをいただいた。とりあえずは役目を果たせたようで、ホッとした。
発表後、一人の見知らぬ聴衆から丁寧なご挨拶を頂いた。「実験工房」のメンバーの弟子筋にあたるという。慌てて名刺を取り出してご挨拶した。富山市瀧口修造のお墓にお参りしたことがあるとおっしゃるので、建立された当時のことや、F.キースラーの「エンドレス・ハウス」などについてお話しして、発表を補足した。こうした繋がりが出来るのが発表のありがたさだろう。
学会の後、神保町に出るつもりだったが、すでに6時に近くになっていたので断念。知り合い2人と会場を後にして歩き始める。雨が上がっていてよかった。泉岳寺に出てART&BOOKSに寄ろうかとも思ったが、2人が品川駅まで歩くというので、右に曲がって品川方面に向かう。
途中、久しぶりで高輪の書肆(兼ギャラリー)K堂に寄る(写真)。2人がここを訪れるのは初めてだそうだ。美術書、文学書、思想書などの棚をざっと拝見する。貴重書が収められたガラスケースの上には、若い作家たちの瀟洒で小さな作品集・版画集がところ狭しと集められている。オーソドックスな古書とギャラリーの刊行物が同居した、不思議な空間だ。
奥の画廊スペースで知人がデッサン展を開催したのは5〜6年前のことだったか。この日は女性作家の個展で、何人かの客が作家さんを囲んで談笑していた。展覧会のたびに作家やその知り合いとのパイプが太くなり、本の品揃えも追加されていくのだろう。
オーナーは確か某大手企業の元役員で、退職されて開店したと聞いたことがある。刊行している冊子も在庫目録ではなく記事が中心で、すでに10号以上発行されている。オーナー自身で編集した同人誌といった趣だ(デザインとレイアウトは「空中線書局」の間美奈子さんだったはず)。こういう店を持てたら毎日が楽しいだろう。
品川まで坂を下ったあたりで軽く打ち上げをと思い、お誘いしてみると、1人は原稿締め切りが過ぎており、帰宅して続きを執筆しなくてはいけないという。内容に即した質問をして下さった方だけに残念だった。もう1人と近くのブラッスリーに入る。
最初に頼んだベルギー白ビールの生には、レモン・スライスが浮かべてあり、ビールというよりジュースのような爽やかさだ。二杯目からは国産のプレミアム黒ビールに切り替える。これはギネスのように濃厚(泡はあれほどクリーミーではないが)。肴に注文したキッシュとバゲット・サンドも、なかなか美味い。最近の展覧会のことなどを話しているうち、「軽く」のつもりが2時間ほど経ってしまった。お忙しい方なのに、遅くまでお引き止めしてしまった。帰る方向が反対なので品川駅で別れ、9時半頃に帰宅。