結果は抽籤で(その3)

selavy2008-07-26

7月25日(金)。午後から外出。日本橋三井記念美術館で「NIPPONの夏」を見る。「夏ならでは」の動植物や行事、娯楽、風俗などを表現した絵画や工芸品を、一日の時間の流れに沿って、朝、日盛、夕暮、夜の4つの章に分けて展示するもの。
第1〜3室は常設の茶道具の展示だが、企画展に合わせて毎回、内容が変えられている。今回は「夏の取り合わせ」。いつもながら粒揃いの名品が展示されており、これを見ているだけで「来てよかった」と思えてくる。
第4室からは企画展示となり、この美術館の所蔵品だけでなく、他の美術館から借りてきた作品もある。全体に変化があってしかもまとまりがよく、見ていて疲れない。テーマの設定が巧みなためだろう。高田敬輔「鯉瀧登図」、北斎「夏朝」、応挙「瀑布図」などの肉筆画は、見応えがあった。なかでも歌麿「寒泉浴図」(上図)は、素晴らしい。裸体の線と色彩の艶かしいこと! 対照的に墨の淡彩で描かれた水の透明で涼やかなこと! セザンヌマチスももちろんいいけど、日本人にはやはり歌麿だ。
館を出て茅場町まで歩き、タグチ・ファインアートの常設を見る。昨年展示された3点のアバカノヴィッチのうちの1点が展示されていた。残りの2点はすでに売れ、この作品も国内のある美術館が関心を持っているそうだが、近々、韓国のアートフェアに出品する予定だそうで、これが見納めかもしれない。
続いてワンフロア下の森岡書店で山本衛士個展「本と彫刻」を見る。古書店よりもギャラリーとしての活動の比重が高くなっているように見受けられるが、いずれにしろ、得がたいスペースなので、頑張ってほしいものだ。

地下鉄で九段下まで出て、神保町まで歩き、某T書店へ。すでに常連のA2さん、A3さん、Mさんが顔を揃えている。長老のTさんは仕事で抜けられないとのこと。閉店間際に買取を持ち込んだ人がいた。大きなバッグ2つ分を先にカウンターに運んできて、「あと、これと同じくらいありますから」と、車に取りに行く。その間に店主は「こりゃひどいや。ブックオフ向きだな。店頭特価で売るしかないな。次回から断ろう」などとブツブツ言っている。後半の分を含めて60冊くらいか。「○○円です」「はい、わかりました」と、商談終了。
「店を閉めたらすぐ行くから、先に行っていてくれよ」というので、4人揃ってすぐ傍の喫茶店古○戸へ。とりあえずはお互いの健闘を期して、ジョッキを空ける。ほどなく、店主と常連のA1さんが両手に稀覯本を抱えて合流、抽籤が始まった。今回はA2氏とM氏の一騎打ちの様相を呈する(A1氏とA3氏はすでに所蔵しているものが多く、私は1点に絞っているため)。量的にはM氏の手に落ちたものが多いが、大物に関してはA2氏が着実に引き当てる。
やがて私がエントリーした1点の段となり、A2氏、私、M氏の順に籤を引いた。が、すぐにA2氏から「当たった」との叫び声が上がり、こちらはあえなく討ち死に。A2君の絶好調と当方の絶不調は続いているようだ。
そのままワインにチーズ、野菜スティックなどで、他の5名は大いに盛り上がっていたが、私だけは憮然として、黙々と飲み、黙々と食べ、煙草をモクモクと燻らす他はなかった。店主お勧めの肉・野菜の蒸し鍋料理とコーヒーを頂いてお開きに。美味しかったが、最後までゴルゴ13のような無表情は崩れぬままだった。
御茶ノ水から東京に出て、中央線ホームからエスカレーターに乗ろうとしたら、後ろを歩いていた初老のおじさんから、左足のアキレス腱のところをしたたかに蹴られてしまった。あまりの痛さに後ろを振り返って睨みつけたが、おじさんは横を向いて知らん顔を決め込んでいる。思わず「俺の後ろに立つな!」と怒鳴りつけてやろうかと思ったが、騒動になっても時間の無駄なので辛うじて抑え、そのまま京浜東北線に乗り換える。
車内で座れたのはよかったが、前のつり革につかまった初老のおじさん(またしても!)が、酔っ払ってフラフラしている。警戒はしていたのだが、途中で電車が揺れた拍子に、左足の中指を思いっきり踏みつけられてしまった。こちらも酔っ払っていたためか、避け切れなかったようだ。
アキレス腱も中指もなかなか痛みが引かない。帰宅してから見てみると、どちらも内出血して青くなっていた。「踏んだり蹴ったり」とはこのことだ。