神保町詣で

selavy2008-08-20

8月19日(火)。早めに昼食を済ませ、神保町に行く。新刊書店で雑誌を買った後、某T書店へ。ちょうど店主夫妻がそろって店に居た。お盆休みの話を聞こうかと思ったら、「昼メシに行こう」と誘われた。こちらはお茶だけにすることにし、一緒に近くの古○戸へ。
左手の大きなカウンターテーブルの角に座り、メニューから抹茶オーレを選ぶと、店主も「それ、良さそうだな」と抹茶オーレ&サンドイッチを注文。「向こうに4人で座っているだろう? あの今話している人が三○堂の社長だよ。後ろの席でこちらを向いているのは○○書房の社長さ」などと、教えてくれる。
休暇中の北海道旅行で泊まった某有名ホテルの料理の酷さや、北海道のレンタカーの料金体系のことなどを聞いていると、そこへ(某T書店の)常連の長老Tさんが入ってきた。ご挨拶してテーブルの隣の席を勧める。Tさんは黒いTシャツに黒のジーパンという出で立ち。白髪によく似合っている。背中に高級品らしいグレーの麻ジャケットを無造作に片手で持って掛けているのが、若々しく実にサマになっている。思わず「Tさん、カッコイイですねえ」と言ってしまった。
Tさんは夏休みに九州の実家に戻り、法事を営んだ後、近くをローカル線で巡られたそうだ。農村の疲弊・荒廃状態について、ひとしきり説明してくださった。その後、航空券の取り方、機内の席の不公平さ、有名ホテルのサービスと設備の酷さなどを巡り、店主とTさんとの間で話がはずむ。(私はもっぱら聞き役に回る)
3人で店に戻ると、Tさんはカウンター近くに陣取り、目の前に積まれている改造文庫を黙々と調べ始めた。こちらは文庫の棚から学術系文庫3冊、さらにカウンター近くに積まれた在庫から、最近出た専門書2冊を選んで買う。
「休み前にまとまった仕入れがあったから片付かなくてねえ。昨日も店を開けずに、中で整理してたんだよ」という。(品切れの)学術系文庫などもかなり入ってきたそうで、「今週あたりぼちぼち表に出すよ」とのこと。
最近結果がまとめられたという、東京の古書籍商組合員を対象とした経営状態のアンケート調査(のサワリ)を、店主が話してくれた。12〜13年前に同様の調査があり、その結果と比較してあるそうだ。売上高1千万円未満の店数の割合が大幅に上昇し、複数の支店を持っている店でも支店も閉鎖する傾向があるなど、特色の無い小さな店の経営状態は相当厳しいらしい。調査結果は冊子にまとめてあるそうなので、これを見れば業界が置かれている状況は一目瞭然だろう。
そこへ知り合いらしいお客さんから電話が入った。何かの貴重本を買って欲しいという依頼のようだった。「値段は実物を拝見してから出しますから、それでよろしければお送りください」と何度も言うのだが、相手は納得しないのか、なかなか話が終らない。すでに3時をかなり回っていたので、こちらはそろそろ引き上げることにする。店主には目礼し、Tさんに挨拶して、店を出る。
その足で銀座に回り、某M画廊のMさんを訪ねる。昨日電話して、暑気払いをすることにしていたのだ。Mさんが詩人の田村隆一とも親しかったという話を前に聞いていたが、今日は『空気遠近法』を見せてくれた。感心しながら見ていると、「よろしければ差し上げますよ」という。機会を改め別にお礼をすることにして、ありがたく頂いてしまった。
そのままMさんと某ビアホールになだれ込み、ビールとワインで暑気払い。田村隆一の想い出から瀧口修造のことまで、話は尽きない。かなり酔った状態で帰宅。小雨が降ったのか、空気が湿っぽく、かなり蒸し暑い。シャワーを浴びて横になると、いつの間にか眠っていた。