近況―Ephemerons はかなきものたち

selavy2009-01-25

ご無沙汰して居ります。正月以来、変な頭痛に悩まされ、病院に通っております。ようやく先週くらいから収まってきましたが、一時は痛みが激しくて、のた打ち回るような状態でした。(念のため、来月、脳の血管を詳しく調べてもらうことにしております。)こんな有り様なので、ネットへのアクセスも、メールをチェックするくらいになってしまいました。(日記が更新されないのを心配して、メッセージや電話を下さった方も何人かいらっしゃいました。厚く御礼申し上げます)。
外出もなるべく控えるようにしています。目黒や浦和など、いろいろ重要で魅力的な展覧会があったのですが、年が明けから出掛けたのは次の4展だけです。どれも知り合いと誘い合わせて(言わば付き添ってもらって)行きました。
A.川村記念美術館の「絵画の森。戦後日本美術の作家たち」展
B.横浜美術館セザンヌ主義」展
C.千葉市美術館「雪舟水墨画」展
D.国立新美術館「DOMANI・明日」展
国立新美術館の展示は、文化庁が昭和42年に始めた「芸術家在外研修」を受けた作家の展覧会で、特に駒形克哉さんの細密な切り絵が並べて展示されている一室が壮観でした。川村記念美術館では瀧口修造のデカルコマニー(上図)や吸取紙の作品が20点ほど出品されていました。瀧口修造没後30年に相応しい展示だったと思います。(夏には私も別のギャラリーを借りてコレクションの展示を計画しております。)
この途中で神保町の某T書店にも2回ほど顔を出しました。(例年、この時期に大学の同級生の集まりが開催されているのですが、今年は欠席しました)
こんな中でうれしかったのは、畏友石原輝雄氏から近著「Ephemerons : Traces of Man Ray」が送られてきたことです。これは「Descriptive list of exhibition catalogues, posters, and invitations 1913 to 2008」つまり1913年から2008年に至るマン・レイの展覧会のカタログ、ポスター、案内状、ビラ・チラシなど展覧会の印刷物(これを「エフェメラ」と呼ぶが、蜻蛉や一晩で萎れる花など「短命のはかなきものたち」の意味もある)、841点に及ぶ資料のリストで、「個展とグループ展に別けられ、都市と会場、展覧会の表題、会期、素材の種類とサイズ、展示品数と分類、テキスト執筆者、来歴、献辞等々」などのデータが詳細に記されていますが、すべて石原氏所蔵であるのが凄い! しかも、装丁からレイアウト、タイポグラフィなども自らこなされたばかりか、自分で作った出版社から刊行するという徹底ぶりです。
前に刊行されたマン・レイ油彩カタログ・レゾネといい、今回のリストといい、マン・レイの研究上、最も重要な基本文献であることは言うまでもありませんが、何よりもマン・レイと彼をめぐる「はかなきものたち」への深い愛情に裏付けられているところが素晴らしい。いや、そんな生易しいものではなく、下手に触ると火傷をするほど、熱くて危険な思いが放射され、まさにマン・レイに対する35年にわたる情熱の結実そのものということが出来ると思います。これで定価5000円(税込み)、送料を入れても5500円とは、信じられない安さです。(限定75部のNo.1は著者本で、そのNo.2を送ってくださったのも、うれしい限り)。
詳細は次のブログで。http://d.hatena.ne.jp/manrayist/20100123