お盆の月

夜9時過ぎ、東の空の雲間から半月が顔を出していた。美しいので、公園の見晴らし台まで出かけて、しばらく眺める。大きな雲が東から西へと流れている。上空では星々も瞬いている。草むらから虫の声が聴こえ、遠くから風鈴の音も聞こえてきた。

先に身罷ってしまった何人かの、さまざまな記憶が蘇る。共に過ごしていた日々。あれから随分遠くに来てしまったものだ。でも、黄泉の国から魂を呼び戻し、ふたたび共に過ごすことができるのは、なんと素晴らしいことか。

まして今生きている人なら、同じ夕焼けを見、同じ雷鳴に驚き、同じ夕立を眺めて、感動を共有することができるのだ。この月だって、今眺めているかもしれない。もうこのまま出会うことはないかもしれないけれど、今、同じ時間を生きている。ただそれだけで幸福だ。