佐倉の幸福な一日

昨日は午前中に出発、川村記念美術館の「パウル・クレー 創造の物語」展を観る。

初期のエッチングから亡くなる年に描かれた「隣の家へ」まで、ドイツの美術館3館の所蔵品を中心にした展示。
宮城県立美術館など、日本国内にある65点も集められているそうだ。

会場の構成は次の通りだが、世界的なクレー学者である前田富士男教授が協力しただけあって、作家の探究の展開に沿うと同時に、研究成果にも裏付けられた、なかなか巧みな構成だった。
1.光の絵
2.自然と抽象
3.エネルギーの造形
4.イメージの遊び場
5.物語る風景

黒の水彩(またはインク、鉛筆等)を重ねることによって光の表現を追究した作品は、初めて見るものだが、素晴らしかった。
(「おりたたみ椅子の子供Ⅰ」「明暗研究」「庭の植物」「螺旋状にねじれた花Ⅲ」など)

また、破壊をモチーフにした絵、ナチスに対する怒りが込められた絵も、時節柄、心に残った。
(「破壊の町」「助けを求めて」「踊りの場面」など)

最後に展示された「隣の家へ」の、両手を前に差し出して扉を出て行く人物が印象に残る。無事隣の家にたどり着けたのだろうか。この時、クレー自身、すでに生と死とが隣り合わせだったことを想起せずにいられなかった。

美術館を出る前に、再度、常設のコーネルの7つの箱と、光琳の「柳に鳥」図屏風を観る。
よい作品を見ることができて、幸福な1日だった。