百日紅

どうやら雨も上がったので、午後から近くの図書館に出かけた。帰りは、散歩がてら、いつもと違う裏通りを通った。10月だというのに、街路樹の百日紅がまだ薄紅色の花をつけていた。この道は今までも何度か通ったことがあるが、花の時期は初めてだったかもしれない。百日紅とは今日まで気が付かなかった。

実家の庭にも百日紅の古木が生えていた。毎年夏になると、きれいな花を咲かせていたが、確か7月末から9月にかけてだったように思う。10月に入ってもまだ咲いていたというような記憶はない。樹によって、あるいは地方や環境によって、異なるものなのだろうか。それとも今年の気象が少し平年とは違うのだろうか。このあたりの判断がつかないのが残念だ。

花の時期に関しては、彼岸花も、咲くのは春の彼岸だったか秋の彼岸だったか、ときどき記憶が曖昧になることがあるが、秋の彼岸に咲く花だったはずだ。田圃の脇に赤い花をつけた彼岸花の小さな群落があるというのは、農村でよく見かける光景だ。

といっても、ここ二十年ほどで農村の風景も、随分変わってしまったようだ。政治的な圧力で米価が高く設定され、米の生産量が過剰になった結果、減反政策が採られて休耕田ばかり目立つようになった。またそもそも若い労働力が農村から流出してしまったので、農地自体も随分荒れてきている。棚田がある風景は、いかにも日本的で美しいと思うが、耕作の条件としては過酷なので、すでに姿を消しつつあるのだろう。