表参道・神保町・銀座

午後から久しぶりに東京まで出る。まず表参道のギャラリー360°を覗いたが、ちょうど企画展の谷間で、在庫セールだった。来月のオノ・ヨーコ展に期待しよう。nadiffに寄り、最近の美術書や図録をチェックする。探している学術系の文庫本は置いていないようだったので、あまり長居をせずに店を出る。長袖だと暑いくらいの気温だ。階段を降り、半蔵門線で神保町へ回る。

T書店では、久々に店主ご夫妻が揃っていた。しばらく四方山話。ある女流美術家の蔵書整理に行った話なども出る。まだ整理が進んでいないそうだが、ある方の肉筆原稿などもあるらしい。その他、最近の政治の話や、国際情勢の話など。

北朝鮮が明日か明後日にも核実験をやるそうですね」と言うと、「やる訳ないだろう」と、自信ありげに断言する。「またどうして?」と聞くと「明日・明後日は連休じゃないか。こんなときに働く馬鹿がいるか」という。奥さんと顔を見合わせて、大笑いしてしまった。そこへちょうど常連のYさんが見えたので、ご挨拶する。Yさんと入れ替わりに帰ることにする。背中に鋭い視線を浴びつつ店を出る。

東京堂に行き、お目当ての文庫を購入。店を出ようとすると、入り口の脇に行列ができていた。宮城谷昌光氏のサイン会だったのだ。いつかこの作家の著作を愛読する日が来るような予感はあるが、今のところは読まずに済ませている。

京橋で地下鉄を降り、銀座方面に向かっていくつかの画廊をハシゴしていると、時刻は4時半を少し過ぎた。その足で出光美術館に行き、今日から始まった「伴大納言絵巻」展を見ようと思ったら、なんと入館は4時半までだった。前回の「風神雷神図屏風」展の時は7時まで開いていたので、てっきり開館時間がそうなったと思い込んでいたのだが、あれは前回だけの特例だったようだ。いくら「伴大納言絵巻」が傑作だとはいえ、「風神雷神図屏風」(しかも宗達光琳・抱一の三役揃い踏み)には、敵わないということか。

「せっかく楽しみにしていたのに」と落胆する。落ち込んでいても仕方が無いと、再び銀座中央通りあたりまで戻り、トボトボ歩きながら、いくつかの画廊を覗く。だが、受けた打撃はやはり大きく、気が晴れぬまま新橋駅に着き、気の晴れぬまま電車に乗った。

帰りの車窓から西の方角を眺めると、金色に近い色の空に、千切れた雲がいくつか流れていた。周囲が輝いて美しい。宗達が描いた風神・雷神の雲のようだ。さらに桜木町まで来ると、MM21のビルの上空に満月が上がっていた。こちらはまさに近未来的な世界の光景だ。

家の近くの駅で降りて商店街を歩いていると、酒屋さんの店先にススキの穂の束がおいてあり、「ご自由にお持ちください」と書いてある。ありがたく一束いただくことにしたが、それだけだと悪いので、缶ビールを2本買って帰った。