立ち読み

夕方、近所のスーパーまで買い物に出かけた。雨の中、わざわざ来たのだからと、ついでに書店にも寄り、何冊かの雑誌を立ち読みした。先日の新聞で、「立ち読みは犯罪だ」とほとんど断言する、音楽評論家Y女史の寄稿を読んだばかりなのだが、いっこうに罪悪感が湧かない。本や雑誌は、買うかどうかを決める前には、やはり中身を知っておきたいし、一度読んだらそれで用が足りるというようなものは、立ち読みで済ませたいものだ。

今日発売の「日経 おとなのOFF」が平台に置いてあり、「日本で見られる世界の名画ベスト100」という特集が気になったが、結局、買わずにパスすることにした。掲載されている作品は、大抵知っている有名な作品ばかりだし、知らない作品は、好みに合わないので、わざわざ観に行きたいとは思わない。付録の「美術館ガイド」は、手元にあると便利かもしれないが、いざ実際に訪れることになって取り出してみると、たぶん情報自体が古くなっているだろう。

記事の一部には、美術館側の説明を鵜呑みにして書いたと思われる誤りも見受けられた。たとえばポロックなどは川村記念美術館の作品が「国内ではこれ一点だけ」という趣旨の説明がされていたが、大原美術館にも富山県立近代美術館にも、なかなかいい作品がある(大原美術館の作品「カット・アウト」は今、竹橋に来ている)。

東京都のリクテンスタインや宇都宮市マグリットのように、購入時に高額な価格が話題になった作品も採り上げられているが、その経緯には触れられていないようだ。こうした作品など、美術館とは何か、コレクションはどうあるべきかを考える上で、格好の材料となるはずなのだが。

もっとも、この雑誌は「サライ」あたりがライバルで、シニア世代向けに、余暇の過ごし方を提案したり、グルメ・レジャー情報を提供したりする雑誌のようなので、美術についても、あまり小難しい採り上げ方はできないのかもしれない。まあいずれにしろ、こうした雑誌をきっかけに、美術の愛好家や美術館を訪れる人が増えるのであれば、それはそれで結構なことだろう。