プラタナス

夕方、近くの公園まで散歩に出かけた。久しぶりの小雨に、樹々が芳しい香りを放っていた。雨を喜んでいたのだろう。特に丘のふもとの芝生の広場に生えているプラタナスの樹からは、ツンとする香りが立っていた。広場のあちこちに、合計10本ほど植えられており、どれもかなりの大木だ。高さは6〜7階建ての建物くらい、幹の直径は40〜50cmほどあろうか。

数年前の台風で、その中の一本が根元から倒されてしまった。まるでブルドーザーか何かで掘り返したように、根が地上に露出していたので、驚いたものだ。このあたりは風の通り道で、春先には強い南西の季節風が吹くのだが、あの時はその南西向きに倒れていた。つまり北東からの風だったことになる。倒れるときにはあっけなく倒れるものだと、ただ呆れるしかなかった。

幼いときに育った家の庭にも、プラタナスの樹が生えていた。秋になると丸くて硬い実が枝から下がったものだ。冬はパリパリに乾燥した葉が落ちて、踏み潰すのが楽しみだった。あのあたりは再開発されたようなので、今は切り倒されてしまったのかもしれない。

ところで、プラタナスが日本に渡来したのは、明治に入ってからのことらしい。西洋風に街路樹を植えるようになったのは明治以降のことだろうから、街路樹用の樹木として輸入されたのかもしれない。この樹は、西洋では歴史の古い、なかなか由緒正しい樹のようで、この点はプラトンの対話篇に出てくることからもわかる。「プラタナス」と呼ばれるのも、プラトンと何か関係があるのかもしれないと思うのだが、この方面にまったく疎いので、断定はできない。どなたかご存知の方、ご教示を。