本を売るなら・・・

午後から伊勢佐木町商店街まで出かける。最近少し本を買い過ぎたようなので、要らなくなった実用書や、もう読み返すことのないコミックを売り捌いて、お小遣いの足しにしようと思いたち、合計18冊を○○○オフに持ち込んでみた。カウンターで番号札を渡され、待つこと5〜6分。館内放送で呼び出された。

「きれいな本をお持ちくださり、ありがとうございます。」
ここでは内容も何も関係なく、ただ状態と形状だけで本を評価するらしい。一覧表の升目の該当箇所に、それぞれ冊数と金額が記入されている。コミックは一律1冊50円。今人気があるか、映画化されたか、シリーズ全冊揃いかなどは関係ないようだ。その他も、ハードカバーか文庫か新書かなどで、金額が大体決まっているようだ。厚さによって多少の違いはあるのかもしれないが、要は1冊100円だ。
「本日のお買取りは、合計1365円になります」

予想価格の2分の1の値段。たまには古本屋さんに売ることもあるので(といっても専門書ばかりだが)、大体の感じは掴んでいるつもりだったが、どうやら甘かったようだ。ただ、重い紙袋を下げて帰るのはシンドイので、そのまま売却することにして、その一覧表の上部に住所・氏名などを記入した。
「いまカードをお造りになると、次回から価格が10パーセントアップとなりますが…」
この値段では、再び利用することは無いと思い、断った。レジから代金を出して、そのままこちらに手渡そうとするので、思わず「そのトレーは何のためにあるの?」と聞いたら、「これは本の代金を載せていただくためのもので…」という。まったく逆だろう。

お釣であれ代金であれ、お金を裸で手渡すのは、チップを渡すときの仕草であり、客に対しては失礼に当たるというのは、接客業のイロハだと思うのだが、この店ではそういう教育はされていないらしい。こんな一般常識も、コンビニやファスト・フードの業態が広まってからは、もはや過去のものとなったのか。いや、ひょっとすると、買取はほとんど慈善事業の位置付けで、マニュアルどおりの丁寧な言葉遣いとは裏腹に、本を持ち込んでくる人間を見下しているのかもしれない…。まあ、こういう瑣事に拘わること自体、こちらがすでに老人になった証拠だろう。

何だか損をしたような、割り切れない気分なので、何か掘り出し物が無いか、売り場を1階から3階まで見たが、何も買うものが無かった。後味の悪いまま店を出る。

その足で近くの古書店I書林に行く。あるわあるわ、ここでは先ほどの○○○オフとは違い、棚には買いたい本がいっぱい。背を見ているだけで、何だかうれしくなってくる。ただ、ここで買ってしまうと、何のために先ほど売却したのかわからなくなるので、見るだけにしておいた。
入ったときとは打って変わった明るい気分で店を後にした。