亥に一富士二鷹三茄子

1月3日(水)。曇り。午後から東京まで出かけ、東博の常設展示を観る。年の初めに相応しく、目下の特集展示は「亥に一富士二鷹三茄子」。「亥」は屏風や軸だけでなく、埴輪、焼き物、武具、根付にいたるまで盛り沢山だ。「富士、鷹、茄子」の方は軸が多かった。他では書初めや年賀状、古今和歌集写本の睦月のあたり、双六絵などなど。改めてお正月気分にひたることができた。(左図は望月玉泉筆「岩藤熊萩野猪図屏風」(部分)、右図は石川光明作「野猪」)

            




国宝コーナーは長谷川等伯の「松林図」。実は、年頭にあたり、これを観たくて訪れたのだ。頭の中でイメージが拡大されているらしく、いつ見ても「もう少し大きな絵ではなかったか」と驚く。紙継ぎのズレなどから、襖絵の下絵だという説もあるらしいが、パネルでも解説されていたとおり、最高級の紙や墨が使用されていることなどから、下絵ではないようだ。

松の描き方は、年末の旅行で見てきた、若かりし頃の等伯が描いた襖絵(円徳院蔵)を想い起こさせなくもないが、藁筆の使用した葉の表現や墨の濃淡で表現された霧の表情などは、やはり円熟した後のことだろう。智積院の桜と楓の襖絵の絢爛豪華さとはまったく対極的な簡潔さだが、どちらも最高度の達成を果たしている。等伯はやはり凄い絵師だ(私などが改めて言うまでもないことだが)。暫く絵の前に設けられたベンチに座って眺めた。
他にも観るべきものが多かったが、4時になったので館を出ることにした。上野の森美術館の「ダリ回顧展」は確か明日が最終日だったはずなので、寄ろうかと思ったが、看板に「ただいま120分待ちです」と表示されていたので止めた。これなら東博で、常設だけでなく特別展「悠久の美」も見ればよかったかもしれない。でも等伯と特集展示だけですでに大満足だ。いい展示を拝見することができ、新年早々ハッピーな滑り出しだ。