挨拶まわり

12月某日、天気が悪くなるという予報だったので、午前中に掃除をし、午後から東京に出て、挨拶まわり。まず浜松町の横田茂ギャラリーに行き、年末恒例の村上友晴展を観る。横田さんとスタッフは年明けの企画展の準備作業で忙しそうにしておられた。年末年始の過ごし方、来年の計画などをお話し、「来年もよろしく」と挨拶して、ギャラリーを後にする。
大門駅から日本橋に出て茅場町まで歩く。Tファインアートに行くとすでにドアは閉まり、年末の閉廊期間に入っていた。階下のM岡書店を覗く。最近はギャラリースペースとしての利用申込が増えているそうで、この日も右側のスペースでは写真展が開かれていた。といっても本から見たいので、まずは真中のテーブルに並べてあったロシア・東欧の写真集を手に取り、頁をめくり始める。
そのときドアが開いて、「あれっ!」という叫び声がした。見ると知り合いの写真家Aさんだった。偶然の出会いにお互い驚いてしまった。Aさんは開催されている高橋ジュンコさんの展示”wreck”を見に来たそうだ。「あっ、これは高橋さんの作品だったのか」と、慌てて右側に移動して拝見した。伊豆方面の島で撮影された難破船の写真。朽ちていく姿に、ついつい自己投影してしまう。
「ここは窓の外が運河になっているので、カモメが飛んでくるんですよ」と、若き店主が窓を上に引き上げた。すると、本当に2〜3羽のユリカモメがどこからともなく飛んできた。餌付けにも成功したそうで、店主がピーナッツを取り出して窓からやり始めると、たちまち20羽ほどに増える。ピーナッツを分けてもらって放り投げてみたが、慣れないせいか、あまりこちらには寄ってこない。
店主が「アイ・コンタクトがポイントなんです」と言うので、ユリカモメに視線を送ってからピーナッツを投げるようにすると、なるほど、こちらに近づいてきて、目の前で純白の腹を晒しながらピーナッツをせがんで羽ばたくようになった。まさにそのとき放り投げると、小さな嘴で器用にキャッチし、弧を描くように滑空して遠ざかっていくのだ。そんなふうにして、しばらくユリカモメと遊ばせてもらった。
Aさんと地下鉄で九段下に行き、神保町まで歩く。写真関係の本を置いている古本屋を3軒ほど回る。東京堂にも寄って中平卓馬の新刊(復刊)を探した。タカノでお茶にすることにして、ミルクティー(ウバ)と抹茶のシフォンケーキを注文する。ダイエットの話をしながら頂いたシフォンケーキは、しっとりした生地に、風味豊かだが甘くないクリームがよく合って、たいへん美味しかった。
ここでAさんと別れ、T書店へ。今年最後の買い物は瀧口さんの『近代芸術』(唯物論全書版)の美本となった。「来年もよろしく」と挨拶して店を出る。その後、松翁で軽く蕎麦と日本酒を頂いてから帰宅。M翁には年内にもう一度来るつもりだが、「31日は築地市場がもうお休みで仕入れができないので、メニューが限られてしまうんです」とのこと。30日の方がベターか・・・