泰と亀

selavy2008-10-13

10月11日(土)、早稲田近くの某所で開催された近代詩の研究会に出席。神原泰と尾形亀之助に関する発表を興味深く聴く。

神原泰(1898-1997)は、大正期新興美術運動を代表する詩人・評論家。特にマリネッティと文通するなど、未来派の紹介者として知られている。自らも描いた絵画も残されている。長生きした人らしいが、未来派の紹介者というイメージが強くて、後半生はあまり注目されていないようだ。回想記でもあると、20世紀芸術に関する貴重な証言となるのだろうが、残っているのだろうか。留学や文通などにより海外の芸術運動と交流を持つ事例は、神原以降も、西脇順三郎村山知義瀧口修造山中散生など、何人か見られるが、特に文通によって交流を持つ場合の動機は、各自でかなり異なっていたようだ。そのあたりまで見極めないと、本当の研究とはいえないだろう。

尾形亀之助(1900-42)は、東北の裕福な造り酒屋に生まれた詩人。生来病弱で、詩風も虚無的に日常を唄うものだったようだ。MAVOなどに参加し、自らも「月曜」などのいくつかの詩誌を主催した。詩集も三冊出しているが、実家の没落に遭って、詩作は次第に断続的になっていき、その後も地方公務員として働きながら、細々と続けたらしい。だが結局、40歳余りで窮死した。ある若手女流文学者が「好きな詩人」に挙げたため、近年、特に若い女性の間で人気急上昇中だそうだ。かなり前から地道に研究を続けてきた秋元潔氏の評伝のほか、正津勉氏による小説も出版されている(写真はその表紙。まるでファッション写真のようにポーズが決まっていて、これなら女性に人気が出るのも頷ける)。

発表終了後、発表者を囲んで、近くの蕎麦屋で、天ぷら盛り合わせ、卵焼きなどを酒肴にビールで打ち上げ。名古屋まで帰る出席者も居たので、8時半過ぎにはお開きに。私自身は横浜までだったが、電車の接続が悪く、帰宅したのは11時近かった。