鉄と岩と空間と

23日、午後から横浜美術館へ行き、元マイミクの方と「リ・ウファン 余白の芸術」展を見る。美術館の前にも鉄板と岩による立体が置かれている。館内に入ると、今日は作家によるレクチャーの日だったが、すでに満員の盛況。聴講は諦めて、展示を見る。

人影がまばらで、落ち着いて観る事ができた。カンバスの下地の作り方が丁寧で美しい。そこに刷毛で何回か重ね塗りされたグレーの図の配置と色調、それに刷毛の痕跡が、実に微妙なバランスで心地よい。カンバスの配置に細かな神経が行き届いていて、展示室自体がひとつの作品と化している。

ことに鉄板と岩石を配置した立体は、部屋全体が竜安寺の石庭のような趣だ。床のフェルトが剥がされて、コンクリート材が剥き出しだが、これがまた作品と好対照。空間全体に硬質な感じを与えている。

要所要所に作家の言葉が掲示されている。これを読みながら会場を巡ると(当然のことながら)一層、作品への親しみが増す。いつまでも会場に佇んでいたくなる素晴らしい展示だった。「現代美術が判らない。苦手だ」という方に、ぜひお勧めしたい。

ちょうど先日マウスパッドを損傷してしまったので、ミュージアム・ショップで替りを買おうと思っていたのだが、こういう時に限って、ショップが閉店中だった。改装だそうだ。

コーヒーでも、と思い、いつものとおりランドマークタワーの眺めの良いコーヒーショップへ行くと、スペースが縮小され、窓側の席がすべて撤去されて、まるで穴倉のようになっていた。これではしょうがないので、美術館のコーヒーショップに戻ると、この日は貸切だそうだ。仕方がないので、一番近いセルフの店に入り、喉の渇きを潤した。

バンクアートで、元マイミクの人の作品も展示されていたのだが、歳のせいか最近は、展覧会をハシゴするのがキツクなっているし、この日は歩き回って疲れたので、日を改めてじっくり拝見することにして、帰宅した。