府中・大手町・神保町

午前中に府中市美術館まで行き、亜欧堂田善展を観る。江戸時代後期の「洋風画家」の一人。家業は染物屋だが、47歳にして松平定信に見出されて仕え、それから谷文晁や司馬江漢に付いて絵画や西洋銅版画を学んだそうだ。

銅版画も油彩(すべて絹本)も、遠近感、光と影の描写が独特だ。油彩はデ・キリコ、銅版画はエルンストを思わせる不思議さ、異様さがあって素晴らしい。由一や江漢、秋田蘭画にも、こういう感じを受ける。この異様さは何なんだろう。司馬江漢、谷文晁、月僊など、関連作家の作品も展示されている。なかなか充実した展示だった。

府中の森公園のベンチで、おにぎり3個の昼食。桜のプロムナードは8分咲きくらいだった。

電車で大手町に出て、三の丸尚蔵館で「花鳥」展を観る。修復なった若冲の代表作「動植綵絵」を中心とする展示で、やはり若冲は圧倒的だ。30点から5点ずつ、半年をかけて展示するそうだが、毎月通うことになるだろう。

その後、二の丸、本丸、北の丸と歩き、千鳥が淵の桜を見る。こちらはちょうど満開だった。ボートが何艘も出ていて、気持ち良さそうだ。対岸は北の丸側の何倍もの人でいっぱいだ。

武道館の脇を抜けて、神保町へ回った。2時間近く歩いたのでさすがに疲れ、途中、大丸焼茶房で一休みする。名物の大丸焼と抹茶のセット570円也。

T書店へ行き、四方山話。例の「流出物」事件、まだいろいろ尾を引いているそうだ。20日付けの東京新聞に掲載された、評論家日垣某による「古書店主は皆、泥棒と同じで、お縄だ」との趣旨の一文のコピーを見せてくれた。実態を知らない人が先入観と聞きかじりの情報だけで書いたことがはっきりわかる。古書組合として抗議すると、早速編集部から取材があったそうだ(逆に言うと、碌に取材もせずに執筆・掲載したということだ)。

その後に掲載された詩人で弁護士の中村某氏の文章も見せてくれた。こちらは作家の生原稿が売買されるようになった経緯や事情が具体的に書かれており、説得力がある。

店を出ると、冷たい風が吹き、雲行きも怪しい。御茶ノ水駅から帰宅。