高砂や〜〜

横須賀の私設美術館まで行き、毎年恒例の「筍を食べる会」に顔を出す。美術館の裏山に竹林があり、そこで採れる筍を、山菜などともに天ぷらにしてくれるのだ。筍ご飯も美味しい。

例年なら美術館の庭で頂くのだが、あいにくの雨だったので、美術館の建物の中でとなった。宮脇愛子さんの初期の作品の前で頂く天ぷらと筍ご飯は、最高だった。

観世流の鈴木佐太郎師、大蔵流の善竹十郎師もお見えだった。善竹師には以前ある席でお話を伺う機会があったので、ご挨拶すると、思い出してくださった。

食事が終わった頃を見計らって、鈴木師が歩み出られ、「せっかく皆さんが建物の中に居るのだから」と、即興で「高砂や〜〜、この浦舟に〜帆をかけて〜〜」と謡ってくださった。これを受け、善竹師も、狂言「末広」の粗筋を解説しながら、一人で太郎冠者、主人、都の詐欺師を演じ分けてくださった。

狂言では、来客の中のドイツの婦人との掛け合いもあったが、こういうハプニングは能楽堂ではありえないだろう。心に残る午後となった。