駒場・松濤・渋谷

夏至の日、朝方の雨で気温が上がらないだろうと思い、同好の士を誘って外出する。

渋谷駅近くの古書店を覗いてから、井の頭線駒場東大前に行き、日本民藝館の「柳宗悦の蒐集」展を観る。

柳は自らの「蒐集」について次のように述べている。
「自分では蒐集家と呼ばれることを余り好まない。なぜなら蒐集のための蒐集をしたことがないし、又この世の蒐集家とは類が違うと自分では思うからである。それに私有するために物を集めてはいないので、この点でも多くの蒐集家とは全く違うように感じる」

では、彼の蒐集とは何かというと、「日本民藝館の使命は美の標準の提示にある」とされているとおり、新しい美の標準たり得るものとして集められた物らしい。

しかし、今回の展示がいみじくも「柳宗悦の蒐集」とされている通り、これらは紛れもなく、柳宗悦個人の眼・美意識で選択された物であろう。(それが「新しい美」としての普遍性に達し得ているかは、見方が分かれるだろう。)

しかもこうした蒐集は、大原孫三郎らのパトロンの存在があって初めて成り立つものだったことは言うまでもない。
柳という人は、やはり幸運な人だったと思う。

旧柳邸も公開されているはずだと思っていたが、すでに公開期間が過ぎ、次回の企画展まで待たなければならないようだ。この点は当てが外れてしまった。

歩いて松濤美術館まで行き、「骨董誕生」展を観る。第一部「骨董への道程」では、江戸・明治期の茶人の蒐集を基に、青山二郎小林秀雄らによって確立された骨董愛好が、どのような過程を経て形成されたかが、実際の彼らの収集品の展示を通じ、はっきり辿れる。骨董の歩みが凝縮された、密度の濃い展示だった。

第二部「骨董様々」第三部「骨董最前線」は、現存の蒐集家や骨董商の所有品の展示だ。こちらは遊び心に溢れているともいえるが、やや緊張感が緩んでいるような気がする。私には第一部だけの展示でも十分で、むしろその方がよかったように思えた。

歩き回って疲れたので、渋谷駅近くの喫茶店で一休みしてから帰宅。