ハシゴの弊害

展覧会を同じ日にいくつも続けて見るのは、あまりよいことではない。後から見る展示が前の展示に左右されて、白紙ではない状態で受け止めることになりがちである。

この夏の経験では、チリーダ展とジャコメッティ展がそうだった。チリーダ展を先に見たので、後に回ったジャコメッティ展にうまく適応できず、結果として、肩透かしを食わされたような印象になってしまったのだ。

実は日を改めて、ジャコメッティ展の方を先に見てみたのだが、この時は最初とは打って変わって、興味深く見ることができた。人間の心理や印象というものは、まことにあてにならないものだ。一般化して誤魔化しているようだが、こういうことは私だけではないと思う。(そういうあやふやなものを下敷きにして書いているこのblogなど、いい加減といえばいい加減だ。)

ジャコメッティ展の場合は、家から比較的近いこともあって、再訪することができたが、多くの展覧会の場合、そんなことは望むべくもない。それどころか、見たい展覧会は目白押しで、行くつもりだったのに気が付くともう終了していた、などということも多い。どうしたらいいのだろうか。

せめて一日に訪れる展覧会を一つに絞るくらいのことは、しないといけないかもしれない。抱一の「夏秋草図屏風」のような作品なら、一日にこの一点だけでも十分だろう。最初からこういう心構えで臨めば、どういう展覧会にしろ、あら捜しをしないで、ありがたく鑑賞できるかもしれない。

といっても、毎日出かけるわけにはいかないし、時間や交通費のことを考えると、現実問題としては、どうしてもいくつかハシゴして回らざるをえない。そして、あいまいな印象に頼った、いい加減なblogを積み重ねることになるのだ。まさに悪循環だ。どう折り合いをつけたらいいのか。

これはそんなに簡単には正解が見つからない問題だ。いやそれどころか、美術品との接し方、美術館のあり方、企画展と常設展などのことを考えると、意外と根の深い問題かもしれない。

書き始めると長くなるので、また折に触れて考えてみたい。