MODERN ART IN WANDERINGS

12月19日(火)。曇り。朝から陽が射さず、肌寒い一日。午後から東京に出かけ、竹橋で「揺らぐ近代 日本画と洋画のはざまに」展を観る。明治以降のいわゆる洋画(=西洋画)と日本画のはざまに位置する作品の焦点を当てた展覧会。狩野芳崖高橋由一から川端龍子熊谷守一に到る130点ほどで構成されている(全161点のうち、前期のみと京都会場のみの約30点を除く)。
今年は日本画というものを改めて問おうとする展覧会がいくつか開催されたが、冬の"NO BORDER"展や夏の「ニホン・ガテン」などは、現状を横断的に並置し追認するだけに終わっていたように思う。これ対し今回の展示は、西洋絵画に初めて触れて以来、画題、画材、造形、展示形態・制度のあらゆる局面で、画家たちがいかに苦闘してきたかを、時間軸に沿って辿ることができる点で意義深い。個々の作品でも忘れがたい作品がいくつもある。まだご覧になっていない方には、是非お勧めしたい。(24日まで。)
常設と写真の特集展示「臨界をめぐる6つの試論」を見て、美術館を出たのは4時近くだった。ウロコ雲が空一杯に広がっていた。
地下鉄で茅場町のタグチ・ファインアートに行く。ドイツの女性作家イングリット・ウェーバーの「シーファー」展を観るつもりだったが、先週一杯で会期は終わっていた。すでに作品は床に置かれ、ちょうどオーナーの田口さんが収納作業中だった。それでも一応すべての作品を見ることはできたし、何点かはわざわざ壁に掛け戻してくれた。「シーファー」とは玄武岩を砕いて作られるグレーの顔料の名称(ドイツの絵具メーカーの)で、今回はこのグレーの作品ばかりだ。作家が日本の岩絵の具に関心を持っていないか訊いたら、もちろん持っているそうだ。ただドイツ人には膠を扱うのは難しいかもしれない。
画廊を出るとウロコ雲が夕陽に照らされて、バラ色に輝いていた。そのまま空を眺めながら歩いて京橋に廻り、ギャルリー東京ユマニテ池田龍雄「場の位相 ワームホール・線」展を観る。近作ばかりだが、素晴らしいエネルギーだ。池田さんはいろいろなオープニングで姿をお見かけするので、制作はどうされているのかと密かに心配していたのだが、大変な充実振りではないですか。いや驚きました。
同じく東京ユマニテ高橋裕理展も拝見する。楠の小片が集積されて造られた、動物を思わせる1.5mほどの大きな立体。楠の高貴な香りが展示スペース一杯に立ち込めており、不思議に心が落ち着いてくる。同じ材料の小さな作品があれば、是非部屋に置きたいと思う。
同じビルのギャラリー坂巻とギャラリー寺下を覗いた後、東京駅から電車で帰宅。