落し物

2月12日(月)。快晴。朝方は冷え込みがきつかったが、午後は日差しが暖かかった。花粉症が怖いので、終日家に閉じこもっていた。夕方、電話が架かってきた。
JR東日本ですが」「はあ」「先週10日に○○駅でVIEWカードを落とされませんでしたか?○○駅で保管しておりますが・・・」「えー!10日は確かに○○駅に行きましたが、まったく気が付きませんでした」「それで、保管期限が今日までとなっておりますが、取りに来ていただけますでしょうか?」「今日、今からはちょっと行けません。15日に東京に出る予定がありますので、15日まで預っていただけませんか?」「では○○駅に確認して、折り返しご連絡いたします。」という訳で、結局、15日まで保管してもらえることになった。実は10日、恩師の一人が定年を迎えられ、最終講義があるというので、○○駅を利用したのだった。
最終講義は「宗達『風神・雷神図屏風』の制作年代について」という題で、200人くらいは聴きに来ていただろうか。「最近は絵を読むのが流行りだが、私は見ることが大切だと思う」という前置きから始まり、宗達光琳、抱一の3点を比較し、また宗達の他の作品も参照しながら、特に背景の金地の空間意識に着目し、風神・雷神図の年代を特定するものだった。論旨の素晴らしさに、時間を忘れて聞き入った。
そういえば、教わっていた頃、目の前の水墨画の年代や描いた画家の系統をいとも簡単に見分けられるので、「どうしたら、そのように解るようになるのですか?」と伺ったら、「作品をできるだけ多く見ることです。東博にでも通うことですね」と教えていただいたこともあった。
講義終了後、立食パーティがあり、懐かしい顔ぶれとアルコールを片手に、お互いの近況などを話す。すっかりいい気持ちになって駅に戻り、SUICAを出して改札を通ったときに、誤ってVIEWカードを落としたようだ。悪用されなくてよかった。