横浜・竹橋・神保町

8月某日、今年一番の暑さだというのに、午後から出かける。まず横浜の百貨店で、知人への残暑見舞いの手配。当然のことながら、すでにお中元のコーナーは撤収され、通常のギフト・コーナーでカタログから選ぶようになっている。だが、どれも今一ピンと来ない。地下の食品フロアに降りて、有名和洋菓子店で好適な品をあれこれ捜しまわる。どの売り場も大変な混雑で、おまけに、何を選択しようとも、相手の方が一枚も二枚も上手で詳しいはずなので、結局は無難なところで和菓子にした。こういう決め方は先方には失礼かもしれないのだが・・・
その後、竹橋の近代美術館へ行き、ミショー展とカルティエ=ブレッソン展の、二人のアンリ展を観る。会期末が迫っているので特にカルティエ=ブレッソン展は大変な混みようだった(昨今の写真ブームの証しでもあろう)。見覚えのある写真がかなり多く、随所で「ああ、これもカルティエ=ブレッソンだったか」と再認識させられた。展示された作品は全部で300点は超えているのではなかろうか。特に50点あまりのヴィンテージプリントのコーナーが素晴らしかった。1945年のデッサウで撮影された、ナチスの女性看守(?)を元の収容者たちが糾弾している場面の写真もカルティエ=ブレッソンだったのだ。(彼自身、動員されてドイツ軍の捕虜とり、脱走したという経験を持っている)
ミショーの大規模な展覧会は、西武百貨店で開催されて以来、25年振りだそうだが、もちろんその間に、N画廊でも何度か小さな個展が開催されていたはずだ。一見して何気なく描かれたように見える墨の線やグアッシュの水彩が、どれも人間の顔のように見えてくるのが不思議だが、逆にこの点がミショーという人の限界でもあろう。
すでに4時半を回っており、常設は省略することにして神保町に回る。「ヒロシマナガサキ」を観ようかとも思っていたが、暑さで疲れてしまったので次回に延期し、古書店街を歩く。T書店を覗くと珍しく客が居らず、店主が一人でヒマそうに車谷長吉の本を読んでいた。といっても、朝から全集物が何点かまとまって捌けたそうで、「今日はもうこれでいい」のだそうだ。店の若い人にも「今日は6時で閉めるぞ」などと声を掛けていた。しばらく世間話。選挙以後は、政治の話題が多くなったようだ。後から入ってきた別の常連さんに挨拶して、店を出る。
暑さで無性にカレーが食べたくなっていたので、通りの反対側のK堂に行く。黒ビールと小サラダ、それにスマトラ・カレーで、少し早めの晩御飯にする。美味しかった。いつも疑問に思うのだが、スマトラ・カレーなのに何故ポーク・カレーなのだろう。もっとも、インド・カレーの店にもビーフがあったりするのだから、これはこれでバランスが取れているのかもしれないが・・・