千葉・神保町

9月某日。朝、久しぶりに大先達のコレクターKさんから電話。あるオークションの出品作についてわざわざ教えてくださった。その他、ヴォルスのエッチング、クニヨシのリトグラフなどの最近の収穫や、西洋の挿絵本などについて話を伺う。
午後から出かけ、千葉市美術館の「若冲とその時代」展を観る。応挙・芦雪・松村景文から若冲までの59点。南蘋派の作品をまとまって観ることができたのが有難かった。岸岱「群蝶図」は、つい先日芸大美術館で襖絵の複製を観たばかりだが、軸装の小品とはいえ、こちらは本物だ。応挙「群鳥図」は若冲が意識されているようだ。若冲旭日松鳥図」と比較すると、応挙の方が鳥の構図を複雑にし、朝日に濃淡までつけて、背景の空間もリアルに描かれているが、今日の眼から見ると逆に陳腐にも見えてしまうところが何とも面白い。蕭白「虎渓三笑図」はやはり圧倒的な迫力だった。この一点だけでも観に行く価値はあるだろう。

改装中の栃木県立美術館から借りた作品による「都市のフランス・自然のイギリス 18・19世紀絵画と挿絵本の世界」展も開催されていた。せっかく千葉まで来たのだから、これも観る。グランヴィル、ドレ、ドーミエなどの挿絵本については、朝の電話のKさんとの話に出てきたばかりだ。不思議な気がした。
お茶の水まで戻ると夕立だった。雨宿りを兼ねて駅近くの喫茶店で一休み。その後、神保町のT書店に行き、店主と立ち話をしていると、そこへ常連のAさんが来店された。三人でしばらく話し込む。話題は千葉市美術館の展示のことからMIHOミュージアム、さらに某新興宗教から最近の政治情勢などへと広がる。6時を過ぎ、一足先にAさんが帰られた。東北方面へ仕入れに出かける予定という店主に挨拶して店を出る。
交差点を渡り、便利堂で絵葉書を物色した後、さくら通りの洋食屋Gで早めの夕食にする。「お勧め」よりもやはり海苔ご飯の「弁当」を選ぶ。このところダイエットのリバウンド(というより、アイスクリームの食べすぎ)で体重が増加気味のため、なるべくアルコールを控えようと思っているのだが、今日は夏に逆戻りしたかのような暑さだったので、ついついビールも飲んでしまった。