関西旅行(2日目)

朝9時半頃に京都国立博物館に着いたが、日曜日とあって、すでに入り口の外まで長蛇の列だ。今回の旅行はこの展覧会を観るためなので、仕方なく行列に加わる。10時半過ぎには会場に入ることができた。だが案の定、会場内は人・人・人の洪水だ。どの作品の前にも四重五重の人垣ができ、最前列で観るには右脇に並ばなければならない。最初の展示室に展示されている「琴棋書画図襖」と「花鳥図襖」は、先年、東博の「大徳寺聚光院の襖絵」展でも観たことがある。あの時の方が実際の空間が再現されていて好ましく思った。
永徳の中では金壁画よりも水墨画の方を好む人は多いが、私自身は最晩年の「檜図屏風」に惹かれる。もちろん力強い水墨も好きで、金壁画よりも水墨の方が画家の個性(と言うことができるか微妙だが)を見分け易いような気がする。前日の晩Sさんもおっしゃっていたことだが、水墨では一目見て、永徳か別人かが見分けられるような気がするのだ。例えば会場中ほどに展示されていた「松鶴芦雁図屏風」は、永徳の孫安信が「祖父永徳真筆也」との見極めがあるが、素人目にも別人の手になることは明らかなようだ。といっても香雪美術館蔵の「四季山水図屏風」などは、右隻を祖父元信が描き、永徳が左隻を描いたものだそうだが、同一人物の手になると言われても疑わないだろう(よく見ると確かに岩の描き方などが少し異なるようだが・・・)
洛中洛外図屏風の傍では、鞍馬の花見、祇園祭盂蘭盆会、紅葉狩り、年の瀬や正月の場面など、その細部を紹介する映像が流されていた。せっかくだから実物で確認しようと、列の後方から何度も繰り返して覗き込み、ようやく7〜8回目で、どこにそれぞれの場面が描かれているか判別することができた。「唐獅子図屏風」と「檜図屏風」は、まずその大きさに驚いた。周囲の描き方の不自然さからして、この大きさでもカットされて屏風に仕立てられたものなのだろう。元の空間が失われたのは何とも残念だ。
会場を出ると、図録・グッズの販売コーナーが設けられており、ここも大変な人だ。辛うじて図録と屏風仕立ての小カレンダーを買う。時刻はすでに1時半を回っていた。
バスで近代美術館に回るが、イタリアの陶芸作家の展示だったので、後回しにすることにして、近くの水辺沿いのカフェで遅めの昼食。その後、竜安寺金閣寺を訪れる。竜安寺は初めてだ。石組みだけで構成された庭は、禅の教えと何らかの関係があるのだろうが、門外漢にはわからなかった。だが、空間をわざわざ斜めにしつらえ、周囲の塀の屋根も急な傾斜を持たせることによって、狭いながらも奥行きを感じさせるように構築されていることは確認できた。
金閣寺は確か修学旅行で来たことがあったと思う。今日はちょうど5時少し前に庭に入ることができた。西の空が夕焼けで刻々と色を変えるのに応じて、金色の壁面も次第に輝きを渋くしていった。パンフレットの写真では1階の壁面も屋根も金色だが、実物は木製と瓦(木皮)葺きでとなっていたので、写真は焼失前に撮影されたものだろう。
バスで三条の戻り、ホテルで少し休んだ後、近くの蕎麦屋に入る。Sさんが二日続けて、しかも引越しの最中に時間を割いてくださったのだ。すっかり恐縮してしまった。鴨鍋は大変美味しかった。店の人に「うどんと蕎麦は、しゃぶしゃぶする程度で」と言われていたのに、どちらも茹ですぎてしまった。ご飯とお漬物も付いてきたが、全体にボリュームがあるので、これは無くても十分だろう。その後、三条付近の喫茶店を2軒はしごしてから、ホテルに帰る。