1978年

1月25日(金) 午後から三田の慶應義塾大学アート・センターまで出かけ、企画展示「1978」を観る。同アート・センターの瀧口修造土方巽油井正一の各アーカイヴでは、毎年この三人すべてにあてはまるテーマを設定し、関係者から寄贈された資料などを展示してきている。今回の展示は三人の1978年に焦点を当てるもの。
瀧口については、この年に刊行された『ミロの星とともに』に関する資料や、ミロ、ジャック・デュパンなどとの往復書簡などが展示されていた。翻訳も付されており、内容を具体的に辿ることができた。いくつかの発見もあった。スタッフのNさんがわざわざオフィスから出てきてくれたので、会場でしばらく話す。また運よく土方巽の関係者Mさんもいらっしゃったので、ご挨拶した。
『ミロの星とともに』刊行時に南天子画廊(今の場所の筋向かいにあった)で開催された刊行記念展のオープニング・パーティでは、2階の階段の上にしつらえられたカウンターに瀧口さんが座り、サインを求める行列が階段の下へ、さらに表の通りへと続いていた。あまりの人数の多さに恐れをなし、また関係者から「一度書斎に連れて行ってあげるよ」と言われていたこともあって、この列に加わらずに帰ってしまったのだが、翌年の7月に亡くなったので、とうとうサインを頂きそびれてしまった。(その後、すでに空き家になっていた書斎を何度か訪れ、オリーヴの枝や実を頂いてきたが、残念ながら、根付かなかった。)
三田に続いて茅場町のギャラリーに行くつもりだったが、予想外に時間を要してしまったので、そのまま神保町に直行し、フランスから一時帰国された知人Nさんと落ち合う(彼女の旦那さんはフランス人で、二人でシュルレアリスムや写真関係の文献を扱う古書店を現地で経営しているのだ)。紅茶専門店に入り、しばらく話す。日本の捕鯨のこと、サルコジのこと、日仏の社会構造や政治機構・官僚制の違い、若者の比較など。なかなか楽しいひと時だった。
すでに7時近くになっていたので、T書店にもN書店にも回れず、三省堂で新刊書を眺めただけで帰宅。
1月27日(日) 竹橋の近代美術館の図書室で調べもの、と思って行ってみると、日曜日は閉室だった。展示室は開いているのに、どういうことだろう。仕方がないので、そのまま早稲田にまわり、某所で開催された近代詩関係の研究会に出席する。今回の発表も詳細をきわめ、例によって他の出席者から鋭いコメントも出されたので、きわめて有益だった。次回は、発表者に指名されてしまった。大丈夫だろうか。