かきつばた

2月5日(火)、午後から外出。銀座のなびす画廊で黒川弘毅・駒形克哉展を観る。単なる二人展ではなく、企画展のように統一性のある会場構成だ。黒川さんの立体を観るのは初めてだと思う。人間とデビルを組み合わせた小品。こういう主題の塑像を焼き物(萩焼のような白地の釉薬がかけられている)で制作するところが面白い。
駒形さんの金と黒の切り紙による作品は、最近も別のところで拝見したばかりだが、今回の方がはるかに展示点数が多かった。一見して初期イタリアのキリスト教美術に対する深い造詣と敬意に裏打ちされていることが判る。が、そこに定着されているのは、そのような神への信仰の証ではなく、もはや信仰が崩壊した現代の不安と空虚感そのものだ。
いつもながら緊密な構成と細部へのこだわりは、凄みを感じさせる。しかも、全体の構成や細部の仕上げが緻密であればあるほど、こうした不安や空虚感は増幅されるようだ。紛れも無く、現代日本を代表する作家の一人だろう。
その後、三田の某所で、恩師の一人の最終講義に臨む。主題は「ピカソからジョットーへ」。歴史とは全く逆の展開のようだが、これはご本人が関心を持たれた順序に従っているから。パワー・ポイントで映し出された図版を楽しく拝見しているうち、予定の2時間以上が経った。結論まで辿り着かないうちに切り上げられることとなった。やはり時間の流れには逆らうことはできないようだ。
その後、構内に設営された会場で懇親会。こういう場合の定石どおり、偉い人から順に乾杯の発声、挨拶と進行する。他の恩師や知人も多く出席されており、近況をお話ししているうちお開きに。
2月7日(木)、小学校の同級生の女の子3人と、出光美術館の「王朝の恋―描かれた伊勢物語」展を観る。岩佐又兵衛在原業平像」、30点にも及ぶ伝宗達伊勢物語図色紙」、「伊勢物語絵巻」、伝宗達伊勢物語屏風」などを堪能した。江戸時代の絵本なども、たいそう美しいものだった。(「筒井筒」の場面を幼馴染と一緒に観るというのは、妙なものだ)
「かきつばた」の歌の場面に因む抱一の「八ツ橋図屏風」をはじめ、光琳・抱一・其一らの、伊勢物語に関連した絵で展示室一つがほぼ埋まってしまうところは、この美術館の所蔵方針の一貫性と所蔵品の充実ぶりを示すものだろう。「前もって読み返してから行けば、もっと楽しめたのに」と反省。
その後、4人で近所の東京ビル「TOKIA」まで歩き、2階のレストランで昼食。肉料理(ビーフストロガノフ)か、魚料理(鯖と春野菜のオリーヴ油蒸し)から1品を選ぶスタイルで、当然、後者を採る。なかなか美味だった。
さらにこのビルの1階にあるベーカリーVIRONでパンを買い込んで帰宅。ここのパンは初めてなのでどんなものか期待していたが、皮はパリパリ、中はモチモチして申し分なく、翌日の朝食・昼食用に買った分まで、ついついその晩に食べ切ってしまった。焼きたてのパンに各種ジャム・クリーム・蜂蜜を塗り放題という、贅沢な朝食メニューも、今度是非試してみたい。