横浜・神保町・長津田

3月14日(金)、午前中に家を出て、まず横浜駅近くの百貨店で買い物をする。その後、駅ビルに入居している書店で、学術系文庫などの近刊を買う。特にブルトン狂気の愛』の新訳(海老坂武訳)は期待できそうだ。
恒例の10パーセント引きバーゲンのため、ビル全体がとても混んでおり、平日の昼間なのにエレベーターが「満員通過」となるほどだったが、閑散としているよりは、華やいだ感じがして、心も浮き立ってくる。そのまま駅ビル内のレストランで昼食にする。
神保町に出て、T書店へ。店主はちょうど仕入れに出かけるところだった。奥さんとしばらく世間話。古書会館の地下で戦前の美術雑誌を1冊拾った後、近くの喫茶店に入り、買ったばかりの『狂気の愛』を読みながら、しばらく時間調整。
5時を回った頃に店を出て、再びT書店に行く。京都から上京してくる友人と待ち合わせているのだ。店主は仕入れから戻っていて、先年亡くなったあるコレクターの(ご遺族から買い入れた)蔵書の写真を見せてくれた。ちょうどそこへ友人も到着、3人でその写真を見ながら、西脇順三郎瀧口修造、佐藤朔、北園克衛山中散生山本勘助、じゃなかった山本悍右などについて、ひとしきり話す。
興に乗った店主が、奥に保管してあったその蔵書から何冊かを取り出してきた。「写真よりはるかにいいだろう」。これは当たり前で、何しろ実物を見るのは初めてという稀覯本ばかりなのだ。あまりの衝撃に額はカチ割られ、頬は痙攣を起こし、純粋な脳髄には鰐が通ってしまった。
その後、友人といつもの蕎麦屋M翁に入るが、先ほどの衝撃が尾を引いて、会話はいつになく滞りがちに・・・。だが食欲だけは一向に滞らず、富山産の蒲鉾、ウルメ鰯、地鶏の塩焼きなどを肴に、1時間ほど地酒を飲む。最後は天ざるで〆る。
神保町駅までふらふら戻ったのだが、改札口あたりの光景を最後に記憶が途切れ、地下鉄に乗った後のこと、とりわけ京都の友人とどこでどう別れたかを思い出せない(失礼がなかったらいいのだが)。たぶん、途中で空いた席に座り、眠り込んでしまったのだろう、はっと気がつくと、そこは何と多摩プラーザ駅だった。「しまった、乗り過ごした!」と思ったが、「渋谷に戻るよりは、長津田横浜線に乗り換えた方がいい」と素早く考え直す。
再びウトウトしかけた頃に長津田駅に到着、辛うじて席を立ち、よろよろ階段を上がって横浜線のホームへ。東神奈川駅に出て京浜東北線に乗り換え(危うく反対方向の東京方面行き電車に乗り込むところだった)、何とか自宅の近くの駅までたどり着いた。すでに11時に近かった。
終バスには間に合わず、大粒の雨の中をとぼとぼと歩くはめになった。靴の中まで浸水するほどの濡れネズミ。気温が高かったので風邪は引かずに済んだが、今日は朝からひどい二日酔いだ。