関西放浪記(その1)

selavy2008-05-08

5月5日(月)、朝、新横浜発の「こだま」に乗り、昼過ぎに京都着。そのまま近鉄で「学園前」まで行く。(新幹線ではうるさく感じた車内の話し声も、関西弁なら苦にならないから不思議。)駅ビルを出ると、周囲の丘がなだらかで美しい。また空気も柔らかくて甘い。「大和しうるはし」だ。
和文華館まで7〜8分歩き、「松浦屏風と桃山・江戸の人物表現」展を観る。国宝「婦女遊楽図屏風(松浦屏風)」(右図)、「阿国歌舞伎草紙」、宗達伊勢物語図色紙」、応挙「東山三絶図」(山水画風だが、遠近法はやはり応挙だ)、探幽「古画縮図」、司馬江漢七里ヶ浜図」小田野直武「江の島図」など、全体に粒が揃っており、コンパクトながら好ましかった。西洋のメゾチントによる少女像を水墨で精密に再現した江戸後期の人物画も印象に残った。
「松浦屏風」は豪華な着物の柄に眼が行くが(京都の織物関係者の関与が指摘されているらしい)、改めて描かれた娘をよく見ると、すべて同じ顔で描かれていた。ついつい澤田知子の写真を連想してしまった。
駅まで戻り、近鉄奈良へ。気温が上がって喉が渇いたので、駅前のベーカリー・カフェで一休み(店頭に価格表がなかったので、メニューもよく見ずカフェオレを注文したら、レジで「500円です」と言われてびっくり! これなら学園前駅のホームでシューアイスを買ったほうがよかったかも・・・)。表に出るとちょうど小雨が降り始めたところだった。埃が洗われて新緑が美しい。ぶらぶらと坂を上がって、奈良国立博物館の「天馬―シルクロードを翔ける夢の馬」展を観る。
紀元前10世紀のアッシリアレリーフアウグストゥス帝が建造した神殿の柱頭、国宝「四騎獅子狩文錦」(東大寺造)、同「竜首水瓶」、同「海獣葡萄鏡」などなど、160点にも及ぶ大規模な展示で、時間が足りず、最後の方は駆け足になってしまった。東大寺正倉院)蔵の錦には、トルファンアスターナ遺跡から出土した「連珠騎士文錦」の二つの断片にもほぼ同じ文様があるので、当時の長安の同じ工房で織られた錦が東西に伝播したものらしい。この三者、1200年も経ってからこの奈良の地で再会を果たすとは、思ってもみなかっただろう(この遺跡から発掘された別の錦の断片は「龍谷大学図書館蔵」となっていた。例の大谷隊が発掘して持ち帰ったものだろうか)。シルクロード展などでもそうだが、この博物館の展示にはいつも、文化財の時空を超えた存在感というものを認識させられる。
駅前のビジネスホテルにチェックインして荷物を置き、表を散歩。目と鼻の先に古本屋さんがあったが、残念ながら連休でお休みだった。夕食に柿の葉寿司でも食べようかと、改札口前の小さな地下街に降りると、駅長室の脇に地元の造り酒屋が開いているスタンド・バーを発見。利き酒セット(地酒3種と酒肴のセット)をお代わりして、お酒を計三合飲み、すっかりいい気持ちになってホテルに帰る。だが、隣の部屋が一晩中うるさくて、あまり眠れなかった。やはり安い宿には泊まるものではない。