原宿・渋谷・恵比寿

selavy2008-06-26

6月25日(水)。今週いっぱいで会期末を迎える展覧会を回る。午前中に家を出て、まず太田記念美術館の「大田南畝」展の後期に行く。半分くらいは展示替えされていた。狂歌の集まりの時に作られた軸物の合作2点は(前期にも展示されていたと思う)、豪華な顔ぶれだ。こういう合作の場合、事前に準備して行ったのか、それともその場の即興なのか、どちらなのだろう。また書き込む分担や順番はどう決めたのだろう。誰か仕切り役がいたのだろうか。いずれにしろ、ワイワイ言いながら仕上げている場面を想像するのは楽しい。
歌麿との合作も多かったようだ。歌麿はこういう交流を通じて頭角を現わし、美人画の大家として大首絵を発表するまでになったのだろう。酒井抱一なども尻焼猿人なる名で狂歌をものしたようだ。南畝という人は狂歌を通じて当時の主だった文化人とほとんど交友があったらしい。知れば知るほど魅力的に思えてくる。(意外なことに)沓掛良彦氏による評伝があるようなので、これは読まなくては。
近くの食堂に入り、焼肉と麦飯で昼食にしてから、歩いて渋谷まで行く。宮益坂下の書店の2階の喫茶店で一休みした後、南口の飲み屋街の真ん中にある古書センターに行く。地下の売り場は美術書の品揃えがなかなか充実していたものだが、いつのまにか閉鎖され、ネット販売のみになっていた。1階は相変わらず、文庫・新書とアダルトが中心。ただお客の入りはいいようで、この日も昼間だというのに5〜6人がアダルトの棚の間でウロウロしていた。レジには若い女性が居たが、あれでは売る方も買う方もきまりがわるいだろう。
階段の途中にはショーケースが設置され、写真集などが飾られている。2階に上がるとフロアの構成を若者向きに変えたようで(息子さんが担当するようになったのだ。晶文社かどこかから著書も刊行したはずだ)、美術、写真、建築、音楽(特にジャズ)、文学、宗教関係などがコンパクトに集められている。レジの前のカウンターはカフェを兼ね、その前の小スペースでは時々ライブも行われるらしい。J.J.グランヴィルの翻訳書があったので頂く。
南口からJRに乗って恵比寿に行き、東京都写真美術館森山大道回顧展を見る。「アレ・ブレ・ボケ」といわれる粗々しさを強調した大胆な表現によって写真そのものを問い直し、今や日本の代表的な写真家の一人に挙げられるまでになった人だが、こちらの感受性が鈍いのか、今ひとつ心の琴線に訴えかけてくるものが感じられなかった。
第一部は年代順に展示され、初期の「にっぽん劇場」「プロヴォーク」を経て、「北海道」「光と影」「ヒステリック」と並べられている。(写真に詳しい方からみると、無知ぶりをさらけ出した感想かもしれないが)写真の歴史に詳しくない当方にとっては、当時の問題意識や苦悩をあまり共有することができなかった。作品自体も、明暗のコントラストが強く、密度が粗いのはよくわかるのだが、1点1点が大きいためか、あるいはプリントの仕方によるものか、逆に写真特有の物質感がそれほど感じられない。第二部の近作「ハワイ」も、美術館に展示された写真というよりは、体育館か通路のような空間にディスプレイしてあるパネルのように見えてしまった。欲求不満を抱えたまま駅まで戻る。
この後、日比谷線茅場町に出ようかとも思っていたが、ちょうど逗子行きの湘南新宿ラインが到着するところだったので、そのまま帰宅。家に着くと郵便受けに七夕の大市の目録が届いていた。興奮しながら頁をめくった。

6月26日(木)。朝から雨模様で、しかも一昨日・昨日とはうって変わって肌寒いほどだ。終日、学会発表の報告書(要約文)作成と後片付け。夕方、神保町の某T書店の店主から電話がある。「明日の市に例の詩画集が出る」とのこと。それなら明日は神保町に行かなくては。