古本日和・工芸日和

selavy2008-11-03

10月31日(金)、夕方から神保町に出掛け、「神田古本祭り」を楽しむ。古書会館の即売会場もいつもよりはるかに人手が多い。某書店の棚で見つけた新刊雑誌には、渋谷にあった「アートスペース美蕾樹」の20年以上に及ぶ活動暦が掲載されていたので、早速購入した。この画廊、しばらく顔を出していない間に閉じてしまったようだが、改めてこの記事で活動を振り返ると、大きな足跡を残したと実感される(オーナー生越さんのさらなるご活躍を祈りたい)。
その後、某T書店に行く。常連のTさんもいらっしゃったので、ご挨拶する。店主は、この日の市で落札したばかりという、野口英世の文献などを見せてくれた。野口の署名入りの肖像写真や名刺なども含まれており、野口自身が献呈した文献類らしかった。
原宿に回り、駅前の中華料理屋で開催された元の組織関係の会合に顔を出す。20年も続いている会で、私以外は皆60歳代後半に入ったが、皆、当時と全く変わらず意気軒昂で、志が高ければいつまでも若いという見本だ。料理も美味で充ち足りた夜だった。


11月1日(土)、再び神保町の「神田古本祭り」へ。御茶ノ水から古書会館に向かい、昨日買おうか迷った文献を探すと、幸い残っていた。今日は迷わず購入、ホクホク顔で古書会館を後にする。昼食は某M翁の手打ち蕎麦で、と思っていたが、最近ベルギービールの店の隣に出来たうどん屋の前に、10Mくらいの行列が出来ていたので、気が変わり(珍しく)行列に並ぶ。かなり客の回転が速いようで、5分ほどで座れた。メニューを見て地鶏の天ぷらを頼んだら、「売り切れました」という。それなら野菜の天ぷらは、と訊くと、これも売り切れ。天ぷらは諦めて、とろろと卵を注文する。熱々でなかなか美味だった。(和製カルボナーラ? 薬味は胡椒ではなく七味だが)。何より安いのがよかった。
この日は陽射しの暖かい、古本日和となった。食後、某T書店に寄ると、店主ではなく奥さんが居た。奥さんの視線を追って、左手を見ると、珍しいことに水場を仕切った暖簾の陰で店主が弁当を食べていた。思わず「まさに『隠れて生きよ』ですね」などと軽口が出てしまった。表に食べに行く時間もないほど忙しいのだそうだ。実際、日本シリーズのことなどを話している間も、お客がひっきりなしに来る。結構なことだ。話を適当に切り上げ、(エピクロスではなく)プラトンの研究書などを求めてから、店を後にした。
靖国通りの歩道には人が溢れ(上の写真は昨年の光景)、各書店のワゴンを覗くのもままならない感じだ。古本祭りに見切りをつけることにし、抜けるような青空に誘われて、一ツ橋方面へと歩き始めた。平川門を通って皇居内に入り、三の丸まで横断。三の丸尚蔵館の「帝室技芸員とパリ万国博」展の第三期を見る。並河靖之「四季花鳥図花瓶」、濤川惣助「墨画月夜深林図額」海野勝除ナ「太平楽置物」飯田新七「四季草花図刺繍屏風」などなど、工芸技術の粋を尽くした逸品を堪能。(入館して間もなく、「閉館します」との声が聞こえて来て驚いたが、ここの閉館時間は4時だった。)さらに東京駅まで歩き、JRで帰宅。