横浜の動物たち

selavy2008-11-13

11月12日(水)、午後から外出。まず横浜駅近くの百貨店内の美術館で開催されている三沢厚彦「ANIMALS '08 in YOKOHAMA」を見る。鑿彫りによる動物の木彫で、油絵具で彩色されている。白くま、犬、猫、ライオン、豹、キリン、猿、コウモリ、ウサギなどなど。実物をモデルにしているようだが、むしろ「ぬいぐるみ」を大きくしたように単純化されており、猫以外は基本的に同じ眼・同じ表情。ポーズにも動きは乏しい。
といっても、形骸化ということではなく、一匹一匹はそれぞれ生き生きとしていて、まるで絵本から抜け出してきた主人公たちのように自分の物語を生きている。中でも白くま(右図)と犬がよい。作家自身もブルテリアが好きなのだそうだ。小さなカエルもまるで宝石のように美しかった。
平日の午後なので、観客はそれほど多くはなかったが、先日の木喰展のときと同様、見ている人が皆一様に幸福そうな表情をしているのが印象的。子供の声がこれほど好ましく感じられた展覧会も珍しい。図録はBTと同じ判型の120頁ほどの厚さで、1800円は若干高めだが、(出版社とのタイアップでなく)この美術館のオリジナルらしいので、とりあえず買っておいた。
その後、東横線半蔵門線を乗り継いで神保町まで行き、某T書店に顔を出す。店主がやや疲れた表情で座っていた。神田古本祭りで休日に店を開けたので、月・火曜日と代休にして東北地方を旅行し、帰ってきたばかりなのだそうだ。しかも帰ってきたら仕入れの話が集中してしまった由。お土産の煎餅とお茶を頂きながら、世間話。野球の話題は注意深く避ける。最近少し気になっているプラトン全集のことなどを教えてもらった。
その後、九段下にまわり、近くの某所で開催された写真関係の研究会に出席。この日のレポーターは某美術館の女性学芸員さんで、最近出版された自著の冒頭に置かれた中平卓馬論を基にした発表だった。中平と「芸術」との矛盾に満ちた関係について、60年代末ごろからの現代美術や写真家たちの動向を視野に入れながら考察するもので、あれほど「芸術」を否定していた中平だが、その批判はむしろ古風な芸術観に基づくもので、逆に現代芸術の地平・方向から見てみると、中平は最も真摯な現代芸術家の一人と言えるとの趣旨。長い間、日本の「芸術写真」と現代美術の二つの領域を中心に研究を続け、企画展を開催してきた方だけあって、なかなか説得力があった。
終了後、出席者で軽く食事に行ったようだが、先週からの寒さでやや風邪気味なので、失礼して帰宅。