コーネルの箱

風邪をひいてしまったし、花粉症がひどくなるのもいやなので、予定していた会合を欠席して、家でぶらぶら、ごろごろ。年末に買った"Joseph Cornell:Secrets in a box"を眺めて過す(Prestl社 Adventures in Art シリーズの1冊)。

"for the young and the young at heart"と断ってあるように、このシリーズは基本的には子供向けなのだが、大人でも十分楽しめる。その1冊としてこの絵本が刊行されたのは、コーネルが、何よりも喜んだことだろう。というのも、どうやらコーネルは、自らの作品の理解者・観客として、大人よりもむしろ子供を想定していたらしいからだ。

解説なども平易に書かれていながら、実に的確である。ページを繰っていくと、コーネルとはどういう美術家か、コーネルの箱とはどういう作品かが、自然に理解でき、末尾の"Make your oun Cornell Box in six easy stages!"というページによって、読者自らが箱の制作に誘われるように構成されている。

ただもちろん、この素晴らしい絵本をもってしても、コーネルの箱とは何かという謎は、最後まで残されたままだし、この謎はおそらく簡単には解き明かすことができないだろう。今から30年近く前に、雅陶堂ギャラリーで開催された奇跡的なJoseph Cornell展のカタログに寄せられた、瀧口修造による序詩「時のあいだを」は、その稀有な例外といえるかもしれない。

いま見てもこのカタログは、その用紙の選択といい、インクの濃さといい、実に見事な出来映え。コーネルと瀧口との詩画集といっても過言ではない。これに比べると最近出版されているコーネルの画集は(上記の絵本を含めて)、私には印刷の色調が若干キツく、また紙面の感触が滑らか過ぎるように感じられるのだが、どうだろう。