デュシャンからアルプへ

雨が降った翌日は、花粉の飛ぶ量が多くなるので、本来なら、今日は外出を避けた方がよいのだが、知人のご家族をデュシャン展とアルプ展にご案内する約束をだいぶ前にしていたので、昼前に横浜美術館で待ち合わせる。

この展覧会は2度目だが、今日ご案内したのは美術に大変関心をお持ちの母娘二人連れ。照明によってできるオブジェの影の重要性などという話に、鋭く反応してくれる。

こういう説明の流れで、改めて「大ガラス」のレプリカを観ると、強めのスポットライトが当てられ、独身者たちの影が映るように展示してある。これには感心した(確か大阪の展示では、多数の照明が当てられていたため、影もぼやけていたと思う)。

昼食でも話が弾んで、気がつくと2時をかなりまわっており、葉山館に入ったのは、4時半近くになってしまった。

アルプ展の方も私は2度目だが、この美術館はいつ来ても、入るとホッとする。いい空間だ。われわれが最後の入場者だと思っていたら、後ろから、聞き覚えのある声がする。振り向くと、池田満寿夫美術館のMさんご夫妻だった。ご挨拶して、デュシャン展を観てきたというと、

「おや、それは不思議な偶然だ。今朝、出掛けに、デュシャンからアルプへ贈られた言葉 “For ARP, art is ARP.” を読んで来たところだ」とおっしゃる。

「その言葉なら瀧口さんのアルプ追悼文にも引用されてます。私も今朝、出掛けに読みました」とお応えすると

「いや、われわれの世代では、デュシャンにしろアルプにしろ、親しんだのは、みな瀧口さんの紹介からだからなあ」とおっしゃる。思わず顔を見合わせて笑ってしまった。