キャッチウェーヴと装幀展

昨日、芸大の音楽学部で、小杉武久さんの特別講座
「Expanded Music―音と超越」
が開催されたので、潜り込ませていただいた。

小杉さんは、芸大在学中の1950年代の「グループ音楽」から、「キャッチ・ウェーヴ」「タージ・マハル旅行団」と、一貫して「即興」を手掛りにしながら、西洋音楽の伝統に囚われない「音」を開拓してきた方だ。ケージ亡き後、こうした「音」の探究を一身に担っているといっても、過言ではない。

昨日の講座は、そうした歩みが、どのような考えから生れたのかを、1960年代までの時期を中心に、DVDによる再現も交えながら、かつて自らが学んだ芸大楽理科で語るもので、もちろん内容は素晴らしかったが、そういう月並みの形容を超えた、ひとつの事件ともいえるものだった。この歴史的な場に居合わせることができたのは、まったくもって幸運だった。調子に乗って、学内の者ではないのに「キャッチ・ウェーヴ」について質問してしまった。

多くの障害を乗り越えて、講座開催に漕ぎ付けたカキノパチダさんと、こういう講座を開催する懐の広さを持っているこの大学に、感謝したい。いや、日本もまだまだ捨てたものではない。

講座の後に、写真を志しているマイミクのWさんと落ち合って、谷根千を散歩した後、千駄木の喫茶店で珈琲を飲んだ。Wさんは、撮りためた中からセレクトして、手づくりの写真集を刊行しようと考えているところだ。マイミクのマン・レイ・イスト氏が運営している銀紙書房の刊行本に関心があるというので、私が所蔵している何冊かを持参してご覧に入れたのだ。谷根千がホームグラウンドであるKさんも合流して、しばらく装丁談義、写真談義、建築談義に花が咲く。

その後、Wさんと神保町に行き、「1920〜30年代の装丁展」を見る。地下のブックフェアでは、あるマイミクの方が、グッズの出品を手伝っているというので、会場内外を見回すと、シロクマのピンバッジで、すぐにわかった。ご挨拶して少しお話しした。

古書の世界は、オジサンの薄汚れた世界だとばかり思っていたが、このような、うら若いのに古書に関心をお持ちの方を前にすると、あまりに落差が大きいので、戸惑ってしまうが、確かに新しい動きが始まっているようだ。

充実した一日だったので、ドクター・ストップがかかっているのもついつい忘れ、ベルギー・ビールで咽喉の渇きを潤してから、気持ちよく帰宅した。