三島由紀夫と円空展

まだまだ会期があると思っていた三島由紀夫展だが、気がつくと5日までなので、今日、行ってきた。

肉筆、書簡、初版本などを中心とする展示で、なかなか充実していた。特に原稿、創作ノート、書簡などが面白かった。書籍では『花ざかりの森』は前にも見たことがあったはずだが、『岬にての物語』は確か初めてだ。『黒蜥蜴』の3通り装丁本も、美しいものだった。

新潮文庫への収録作品の、売れ行きもグラフ化されていた。上位に『潮騒』『金閣寺』『仮面の告白』あたりが並ぶのは当然だろうが、『午後の曳航』などが入り、「豊穣の海」4部作が入っていないのは意外な気がする。『春の雪』などもっと売れていてよさそうなのに。

翻訳や海外で刊行された研究書の展示も、ずいぶん多かった。今でも日本を代表する作家ということになっているのだろうか。今では村上春樹あたりの方が注目されているのだろうか。

中華街の小さな店で、海鮮麺と炒飯の昼食。喫茶店エスプレッソを舐めた後、地下鉄で、横浜そごうの円空展に向った。

素晴らしい展覧会だった。近年の新発見と研究によって解明された円空の生涯の足どりと作風の変遷が、展示によって辿れるようになっている。(といっても、展示は地域別なので、頭の中で再構成する必要があるのだが)

倒木や木の切れ端に、鉈で切り込みを入れるだけで、あのような神仏の姿が出現すること自体、すでに驚異的なことだが、ひとつの造型として見た場合でも、ブランクーシジャコメッティピカソなどを思わせるものがある。

その上、粗々しく緻密な木目をそのまま残した、まるでオブジェのような像・物体もある。300年前にすでに円空の意識は、造型を超えた物質に向っていたかと思わせる。いやいや圧倒された。

確か瀧口修造は、円空が試みていたことは近代の造型作家に通じるという意味のことを指摘していたと思うが、まさにその言葉を実感できた展示だった。