フィリパキのオークション

マイミクのぱらんさんが、パリのクリスティーズで先週開催された、オークションのカタログを送ってくれた。全部で3分冊の、豪華なハードカヴァーのカタログだ。

フィリパキは、出版で財を成した、シュルレアリスム関係の大コレクターで、その美術品のコレクションは、先年、ニューヨークのグッゲンハイムで展覧会が開催されたことを記憶されている方もいらっしゃるだろう。今回オークションにかけられる蔵書は、フランスの伝統に則った、贅を凝らした装幀が施されていることで有名らしい。ソフトカバーのチャチなカタログは似あわないし、仮にそんなものを造ろうものなら、オークションの成績自体にも響きかねない。

そのような貴重な蒐集を散逸させるのは、もったいないとも思えるが、今回、市場に還流するという、思い切った決断をしたらしい。蒐集品には、それぞれの行き先で新しい運命を、という考え方も、筋は通っている。著名な装幀家の衣をまとった書物が、どこに収まろうとも、フィリパキの旧蔵書であることは、たぶんはっきり判るだろう。

カタログの第1・第2分冊は、初版本だけでなく、マニュスクリ、ドローイングなども多数含まれている。陳腐な言い方だが、眺めているだけで、ため息がで出る。特に第3分冊は、1冊すべてベルメールのデッサン・デカルコマニー・写真・初版本などで占られている。ファンにとっては、カタログ自体、垂涎のものとなることは間違いない。

第1分冊の後ろの見返しにフィリパキ氏の「私のコレクションに奉仕するシュルレアリスム」という言葉が引用されている(この言葉は有名な雑誌「革命に奉仕するシュルレアリスム」のもじりだ)。

この言葉に示されている豪華さへの志向は、シュルレアリスムには相応しくないという印象も持ってしまうが、こういう感慨は所詮、オークションには参加できず、カタログを見るだけで我慢しなければならない、貧乏人のヒガミだろう。