三鷹・落合・中井

三鷹市美術ギャラリーで開催されている「高島野十郎」展に行く。最初期の自画像、静物画、風景画、月を描いた作品、蝋燭を描いた作品と100点程度が並ぶ。初の回顧展ともいえる展示で、しかも最終日の前日ではあるのだが、これほど混んでいるとは思わなかった。

画壇的な交渉とは無縁に、既存の画家からの影響も努めて避けて描かれた作品は(ただしゴッホ風にひまわりを描いた小品は在るが)、いわゆるアウトサイダー・アートに近い、一種の痛ましい感覚を引き起こす。しかし、画家自身にとっては、描くことそれ自体が、一種の宗教的な、浄福な営為だったようで、他人がどんな感想を持とうが余計なお世話だろう。

それにしても、こういう地味な企画展示にこれほどの人が集まるのは、一体なぜなのだろう? 2200円の図録も飛ぶように売れていた。理由が少し気になるところだ。これはたぶんマスコミ(特に「日曜美術館」か何かのTVで)で大々的に取り上げられたのかもしれない。

茶店で時間調整した後、中央線・東西線で落合まで行き、そこから中井まで歩く。瀧口修造の家があった西落合まですぐのところに、知人が家を建て、お祝いの宴に招かれた。障害者の子供を持っているのだが、きわめて明るく朗らかな家庭で、気持ちのよい晩餐会だった。