画廊巡りとシンポジウム

午後から画廊巡りの旅に出る。

まずJRを新橋で降りて、閑々居の長尾和典展へ。和紙と墨の線による作品。和紙は重ねて張ったり、石で擦ったりして、テクスチャーに変化が与えられている。そこに加えられた墨は、滲まされたり、上に和紙が張られたりしてあり、奥行きを感じさせる。明確に引かれた細く震える線も、青や茶などのニュアンスが美しい。いつまでも見ていたくなる、繊細な作品。値段はデパートで売られる巨匠の版画の10分の1以下だが、完売に近く、残っているのは比較的大きな作品ばかりだった。作家さんと画廊の女性オーナーに挨拶して画廊を後にする。この展示だけでも出てきた価値は十分あった。

その後、銀座・京橋の10軒の画廊が共催している「新世代への視点2006」展を中心にハシゴし、5時から京橋で同展関連のシンポジウムを聴く。テーマは「挑戦する日本絵画 日本画から日本画へ展を糸口として」

学者1名、学芸員2名、美術家3名によるもので、「シンポジウム」といっても、各発表者の発表で予定時間(3時間)の大半が使われ、議論になったのはほんの10分程度だったが。

全体の大まかな流れは、「日本画」という言葉の定義や、その言葉の政治性の部分を不問に付したまま開催される最近の展覧会に対して、美術家の側から疑問が提起されたということだろうか。やはり学芸員より美術家の方がはるかに真剣に悩み、考えているなあという印象。

ちょうど先年、三鷹市美術ギャラリーで自らのコレクションを展示する企画に協力された丸山二郎さん(仮名。実は著名な研究者・評論家でもある)もいらっしゃったので、高島野十郎、フジタの戦争画瀧口修造の大戦中の評論などについて、奥の深いお話をうかがう。