絵画の鎖・光の森

4月7日(月)、渋谷区立松濤美術館の「中西夏之新作展―絵画の鎖・光の森」のオープニング・レセプションに出かける。美術館で「新作展」とは、凄い(そして間違いなく画期的な)ことだ。地下1階と地上2階の2フロアは白色を基調とする新作の(おそらく連鎖的な)タブローが並べて展示され、文字通り「光の森」と化していた。見ているだけで、いや会場に居るだけで、心地よい波動を浴びているような感覚を受けた。
また2階の奥に展示されていたドローイングは、タブローとタブローからタブローの移り行き(作家自らの言葉では「間の作業」であり「沈静、認知、次へ」)を示すもので、いろいろ考えさせられた。その展示室の入り口の右側に、1959年のデッサンが1点特別に出品されていたが、明らかに今にいたる連続性が認められ、ある種の感動を覚えた。
レセプションには美術評論の大御所や同世代の作家たちが一同に顔を揃え、壮観だった。閉館時間になり、作家たちが肩を並べて美術館から渋谷方面へと歩いていく様は、下校時か同窓会の光景のようでもあり、微笑ましかった。(会場で出会った知人もいつになく多かった。これも一種の同窓会のようなものかもしれない)
図録も素晴らしい出来映え(ハードカバーなので開けにくいが、ソフトカバーではこの存在感は出せなかっただろう)。林道郎氏、光田由里氏の論考も、非常に示唆に富んでいる。今来月にかけて、様々なイベントも企画されているようなので、また何度か訪れたい。
渋谷のVIRONでパンを買い、地下鉄で神保町に回る。閉店間際のT書店に行くと、テレビ番組制作会社のスタッフの女性がちょうど取材に来ていた。店主と常連のお客さん2名を交え、しばらく話し込む。なかなか難しい宿題をもらって、頭を抱えながら店を出る。
新刊書店で「水声通信」(特集「シュルレアリスム美術をどう語るか」)と岡崎武志『女子の古本屋』を購入。雨が本降りにならないうちに家に辿り着こうと、早めに地下鉄に乗る。夜、宿題へのヒントを求めて、京都の知人に電話。
今日は一日、家で中西展の図録と、買ったばかりの「水声通信」、『女子の古本屋』などを読んで過ごす。最後の単行本は、ここ数年、出現してきた、女性が経営する古書店のレポートで、「ちくま」の連載記事をまとめたものらしい。実にいろいろなタイプの店(ネット上の書店も含む)があるものだ。簡潔ながら女性経営者の経歴や人となりまで巧みに紹介されており、こうした店の多様性は、ほかならぬ彼女たちの生き方自体にそれぞれ物語(とポリシー)があるからだなのと納得させられた。古書店を開きたいという女性がさらに続いているわけも、少しわかったような気がする。一時のブームに終わらず、さらにこうした店が増えることを期待したい。